リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

「プレスク・リヤン賞2013」入賞者の紹介です!

 

全国2万5千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

今日はリュック・フェラーリのサウンド・アーカイブを使用した、2年に一度の国際コンクールPrix Presque Rien2013(プレスク・リヤン賞2013)におきまして« Le La en Le »で本年見事にプレスク・リヤン賞に輝いたブライアン・ジェイコブ氏、ならびに佳作に選出されましたジェイムズ・アンディーン氏、佐藤亜矢子氏のプロフィールをご紹介します。

 

今回簡単ではありますが、掲載に先立ち、受賞者の皆さんの「音楽における個人的関心事」と「リュック・フェラーリのどこに魅かれますか?」ということも合わせて伺いました(参考に意訳をつけておきます)。

 

なお受賞作の詳細ならびに審査員団につきましてはこちらからご覧ください。

速報!Prix Presque Rien 2013 (プレスク・リヤン賞2013) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

ブライアン・ジェイコブ氏はニューヨーク出身。現在オーストラリアを拠点に音楽活動をする一方で、2年前にはLa Muse en Circuit(回路の詩神協会)が主催するヘールシュピールに対する国際コンクールであるConcours Luc Ferrariリュック・フェラーリ賞)も受賞しています。

 

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« Le La en Le » by Bryan Jacobs : first prize

 

 

 

Your personal concerns in music

 

I can't say I'm actually concerned with anything but I am attracted to music that poses challenges. It often helps me if a piece is against something, if that's even possible. There are as many ideas of how to deal with these issues as there are composers. For me, organizing dramatically contrasting materials to interrupt the trajectory of otherwise predictable forms, is key.

 

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

ー実際のところ私が何に関心を持っているか、ということは私自身にもうまく言えないのですが、私は挑発してくるような音楽に引きつけられます。ひとつの作品が何かに対抗している場合、それは可能性として私を助けてくれるのです。作曲家と同じくらいの膨大なアイデアがそこには詰まっています。私がそれらにありきたりな経過をたどらせないようにするためには、対照的な素材を劇的に組み合わせ、構成すること、これこそがまさに私が作品を作る上でのカギとなっています。ー

 

 

 

About Luc Ferrari, which are his characteristics that you are most interested in?

 

Luc Ferrari's music is refreshingly devoid of ego. There are few tricks. Often, he allows the sounds he finds to speak for themselves, naked and exposed. It's clear there is a loving hand behind the microphone but the listener's intended experience is not dictated. Instead, we float from one sound environment to another, at once trying and not trying to fit the sounds into an intelligible narrative.

 

 

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

リュック・フェラーリの音楽は、自己主張という部分を軽やかに回避してしています。そこにはトリックはほぼないように思えます。しばしば彼は、彼が探して来た音たちを、それがまるで自らひとりでに語っているかのように、「生」の状態で曝(さら)します。彼の「愛するべき手」がマイクの後ろに隠れていることは明白ではあるものの、しかし聴く側が予想するような経験はずらされるのです。その代わりに私たちはひとつの環境音から他の環境音へと漂い、その一見解りやすい物語へそれらの音を割り振ろうと、一度は試みてはみるのですが、結局すぐにそれをやめてしまうのです。ー

 

なお、ブライアン・ジェイコブ氏のウェブサイトはこちらになります。

興味をもたれた方はぜひこちらのリンクから。

 http://bryanjacobsmusic.com/

 

 

続いて佳作となった2人の作曲家を紹介していきましょう。まず2位となった« Déchirure »を作曲したジェイムズ・アンディーン氏は41歳。今回フィンランドから応募されました。

 

 

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« Déchirure » by  James Andean : special mention 

 

Your personal concerns in music

 

I have a deep love and fascination for recorded sound – as a material, as an object, and as an experience. My work tends to focus on the use of sound for both its musical/sonic properties, and its capacity to provoke narrative imagery. I am constantly drawn to sound's ability to resonate simultaneously as both a symbol, and as a purely sensual experience. These concerns are reflected in my work in a range of categories, including electroacoustic composition, sound art, sound installations, audiovisual work, etc. They have also guided my compositional work towards genres with similar priorities, such as acousmatic music, 'cinéma pour l'oreille', and soundscape composition.

 

 

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

ー私は録音された音に深い愛情と熱意を持っていますー素材として、対象として、そして、経験としてー。私の仕事は物語の心象を呼び覚ますことができるように音楽/音響という両方に対して焦点を当てる傾向があるのですが、私は常に、共鳴する象徴と同時に純粋な音響経験として在る、音の可能性に没頭しています。

そしてこれらの関心が、私の仕事の幅~エレクトロアコースティックの作曲や、サウンド・アート、サウンド・インスタレーション、オーディオビジュアルといった作品の構成~に反映しています。これらはまた同様にアクースマティックであるとか、”聴くための映画”や音の広がりといったよく似たジャンルの方向への仕事へと、私を誘うのです。ー

 

 

 

About Luc Ferrari, which are his characteristics that you are most interested in?

 

I am a great admire of the tactile virtuosity of some of Ferrari's work, but most important of all, I am drawn to Ferrari as a sound philosopher. For example his ideas on the narrative aspects of sound composition, laid out in his initial work on anecdotal music, are incredibly insightful, and provide a complete and concise appraisal that remains unsurpassed to this day, and which have been very important for my own work.

 

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

フェラーリの熟練した技にはまったく感服しますが、私は「音の哲学者」としてのフェラーリこそが、最も重要であると考えています。例えば逸話的音楽の初期における彼の作品の物語の諸相についての考察などは信じられないほどの洞察力にあふれていて、今日においても未だ卓越していますし、私の仕事も、その影響を抜きにして考えられないものだと言えます。ー

 

なお、ジェイムズ・アンディーン氏のウェブサイトはこちらになります。

このリンクからご覧ください。

www.jamesandean.com

 

 

そして今回3位となった« Small stroll  »を作曲した佐藤亜矢子氏

 

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« Small stroll  » by Ayako Sato : special mention

 

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

ー楽音の「外側」にある音響に関心を持ち始めて10数年程たちます。それらを扱って音楽作品というものを作り続けているわけですが、さて、これから一歩二歩進む為に、道端に転がってる枯れ枝のような存在である私が「何を」「どこに」「いつ」「どのように」表現/発信していけるか?という所が、ごく個人的、さらに私個人の内部における関心事であり、悩み事でもあり、悶々としながらもレコーダーを携えて彷徨う日々です。

ちなみに近頃の「外側」の関心事は、海外の歩行者用信号機の音。日本と違ってメロディは鳴らずカチカチ言うだけ(しかも青信号の時間が異様に短い)の素っ気なさが好きです。ー

 

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

ー音楽が純粋に音楽的要素のみで成立しておらず、ある面では従来の態度で行う音楽鑑賞を阻害しかねないエッセンス~もちろん良い意味で~すら多分に含んでいるような、そんな「お洒落な」才智の部分です。そしてその独自のセンスを保持しつつ、常に時代に寄り添った新鮮な空気を取り入れ続けていた姿には畏敬の念すら抱きます。

未聴の作品がまだまだ沢山あるので少しずつ集めている所ですが、聴くたびに新鮮な発見や驚きをもたらしてくれます。また、音楽外のことで言うと、彼のファッションやインテリアのお洒落さにも心惹かれます!! ー

 

 

なお、佐藤亜矢子氏のウェブサイトはこちらになります。

興味をもたれた方はぜひリンクからお進みください。

http://asiajaco.com/

 

 

今回の3人の受賞者の作品は12月20日の18時半より、パリのINA/GRMスタジオ116で演奏されます。

なお当日は上記3作品の他にも、最終選考に残った中から、永松ゆか氏の« Foot steps » 、Alexandre Homerin氏 の« Variation sur un même thème » 、委細昌嗣氏の « oto no tegami »  、Andrea Belfi氏の« COL» 、そしてDonia Jourabchi氏の« Fragments and Alterations »  が演奏される予定です。

 

【参考過去記事】

 

速報!Prix Presque Rien 2013 (プレスク・リヤン賞2013) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

2013年12月のリュック・フェラーリ関連イベント(欧州ならびに日本) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

パリINA/GRMでのPrix Presque Rien 2013 (プレスク・リヤン賞2013)コンサートのお知らせ - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

プレスク・リヤン賞【1】(4月13日重要追記あり) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

プレスク・リヤン賞【2】 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

プレスク・リヤン賞【3】より多くの可能性のために~ - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

プレスク・リヤン賞【4】ポスターの各国版を集めてみました - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

プレスク・リヤン賞2013に参加いただいた方へ - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)