全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。
本年6月30日をもちまして、Association Presque Rien (プレスク・リヤン協会 )は創設10周年を迎えました。
2005年のリュック・フェラーリ没後から1年足らずの2006年、彼の伴侶であり、作曲家でもあるブリュンヒルド・フェラーリさんにより立ち上げられた当プレスク・リヤン協会は、夫妻の友人や欧米における熱意ある方々のお力添えを得、リュック・フェラーリの遺した作品資料のアーカイブ化、国際コンクール「プレスク・リヤン賞」の創設、またリュック・フェラーリ作品の未発表未公開作の出版や、リュック・フェラーリならびに作品を縁とする芸術家への協賛支援などを通じ、精力的かつ積極的に活動して参りました。
また世界中のさまざまな芸術家、音楽家、出版人、愛好者の皆様との連携をいただき、日本でも開設準備室の期間を経て、プレスク・リヤン協会日本支局を立ち上げることができました。
そこで本日は、2006年6月から2016年6月までのプレスク・リヤン協会創設10年間の歩みとともに、その間世界各国でリリースされたリュック・フェラーリとその関連44作品(再発、限定版など含む)を紹介しつつ振り返ってみたいと思います(CDリリースはLUC FERRARIおよびDiscogs、オメガポイント、Testklang、“Les Grandes Répétitions” - Stockhausen & Varèseを参照)
なお、この10年のリュック・フェラーリ関連のコンサートや上演、上映、ライブについてはその数があまりに膨大になりますので基本的には掲載していません。それらの詳細につきましてはプレスク・リヤン協会本部ウェブサイト、またはプレスク・リヤン協会日本支局公式ブログ:リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)をご覧ください。
また、支局で確認できていなかったり、届いていない情報もあるかと思いますが、書籍や雑誌などの掲載情報につきまして、情報をお持ちでしたら、ぜひとも支局アカウントまでメールでお知らせください。
なお、蛇足かも知れませんが、「この10年ってどんな年だったっけ?」なんて思われた方はこちらの→社会トレンド年表(10大ニュース、ベストセラーやヒットチャートなどがまとまっています)とともに読み進めていただくのも、あれこれ思い出せていいかも知れません。
ちなみにほぼ皆様が持っておられるであろう「携帯電話」を参考にしてみると、VodafoneがSoftbankに商号変更し、ツーカーホンが新規受付を終了したのが2006年の6月。NTTドコモがmova(2G)からFomaになり、iPhone3が日本で発売されたのが2008年。また、今のような形のスマートフォンが日本で爆発的に普及しだしたのは2011年夏、わずか5年前のことなのですね。
では早速10年前に戻り、2006年の様子から眺めていくことにしましょう。
2006年の6月30日。この日パリではプレスク・リヤン協会が11区、シテ・ヴォルテールにあるポスト・ビリッヒで産声をあげます。
この年、リュック・フェラーリに関する3枚のCDがそれぞれリリースされました。
2016年に来日を果たしたDavid Grubbsさんの"Blue Chopsticks ”(Drag City)レーベルからは<<Far-West News(2&3)>>や、eRikmとラボリントスによる追悼作ともいえる「そして音はガリーグを巡る」がCésaréから、そしてまた<< Son Mémorisé >> がSub Rosaより発売されました。
Césaréはランスにある組織で、「ピエール・アンリ」と「リュック・フェラーリ」という名前の二つのスタジオを持っていますが、近年はEU(ブリュッセル)の文化政策予算削減のあおりで、その活動を停滞させざるを得なくなっています。
Luc Ferrari - Far-West News: Episodes 2 And 3 (CD) at Discogs
Luc Ferrari - Ensemble Laborintus - eRikm - Et Tournent Les Sons (CD, Album) at Discogs
Luc Ferrari - Son Mémorisé (CD, Album) at Discogs
【参考記事】
特集:ブリュンヒルド・フェラーリ来日企画2014ルポ(その2) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
続く2007年。この年は“ La Muse en circuit ”(「回路の詩神」協会)から、2枚の「リュック・フェラーリ賞」(D・ジスさんにより創設された、ヘールシュピール(オーディオドラマ)作品に対する賞、後述される「プレスク・リヤン賞」とは別物)の新しい作品集や、Les Editions Licencesからの特製限定本<< Sonopsys >>叢書に「リュック・フェラーリ」が加わり、さらにSub Rosaからも特典DVDが付いた「ディダスカリーズ」特装版&通常版が出ています。
また若き盟友eRikmさんによる<< Les Protorhythmiques >>も出ました。この作品は2015年にストックホルム王立音楽院でブリュンヒルドさんと講演を行ったLawrence Englishさんと、時を同じくしてストックホルムでの電子音響音楽コンサートにブリュンヒルドさんを招聘したプロデューサーであるJohn ChantlerさんによるROOM40からのリリース。
(John Chantler さんはこの7月に来日されます)
Luc Ferrari - Didascalies at Discogs
Luc Ferrari - Didascalies (CD, Album) at Discogs
Various - Hörspiel Avec... Madame De Shanghai (CD) at Discogs
ERIKM ( Luc Ferrari ) & Thomas Lehn - Les Protorhythmiques (CD, Album) at Discogs
Luc Ferrari - Sonopsys N° 4 (CD, Album) at Discogs
Various - Concours Luc Ferrari. 7e Concours International D'Art
Radiophonique Pour Sons Fixés Et Voix (CD) at Discogs
【参考記事】
限定本 ”sonopsys” の紹介です - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
「フェラーリ地帯(ライン)」(第4回;La Muse en Circuit (回路の詩神協会) ) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
さて、2008年、いよいよこの年、当ブログでもよく取り上げてきたジャクリーヌ・コー監督による<< Presque Rien avec Luc Ferrari >>のDVDがイタリアのレーベルElicaより発売されました。
また<< Archives Génétiquement Modifiées / Société II >>がRobot Recordsより、そしてキャロサンプからリュック・フェラーリの2003年の来日時に西麻布のSuperDeluxeで大友良英さんと共演したライヴ音源をCD化した「水から救われたアーカイブス」が発売されたのも、2008年です。 なお、この年、上記でも触れたROOM40 からはCD<< Tuchan-Chantal >>が出ています。
Luc Ferrari - Tuchan-Chantal at Discogs
Luc Ferrari - Archives Génétiquement Modifiées / Société II (CD, Album) at Discogs
Luc Ferrari Avec Otomo Yoshihide - Les Archives Sauvées Des Eaux (CD) at Discogs
Jacqueline Caux and Olivier Pascal - Presque Rien Avec Luc Ferrari (DVD) at Discogs
【参考記事】
「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」【第六回】特別編:ジャクリーヌ・コーをマークせよ! - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
2009年は、ついに10枚組ボックス<< L'Œuvre Électronique >>(リュック・フェラーリ電子音楽全集)が INA - GRM から発売された他、イタリアのレーベルElicaからは昨年のDVDに続き、リュック・フェラーリの旧友ジャック・ブリソさんによるジャケットも楽しい「セクソリダード」、また先ほどのBlue Chopsticksから<< Les Arythmiques >>が出版されています。
また、「トゥシャンーシャンタル」と組まれていた作品から、「シャンタル」を抽出したCDがカナダのOHM / Avatarから発売されたのもこの年。
このイタリアの Alga Marghen から出た << Labyrinthe De Violence >>(暴力の迷宮) のジャケットをちょっと覚えておきましょう。
Luc Ferrari - Chantal (CD) at Discogs
Luc Ferrari - Les Arythmiques (CD, Album) at Discogs
Luc Ferrari - Dialogue Ordinaire Avec La Machine/Sexolidad (CD) at Discogs
Luc Ferrari - Labyrinthe De Violence / DANCE (Vinyl) at Discogs
Luc Ferrari - L'Œuvre Électronique at Discogs
【参考記事】
「フェラーリ地帯(ライン)」(第2回;Jacques Brissot) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
さて、2010年。
この年、リュック・フェラーリ没後5年を経て、ブリュンヒルドさんが自作をリリースします。まずはイタリアの Alga Marghen より、彼女が即興音楽集団GOLとがっぷり組んだ「即興のエクササイズ」と、<< Tranquilles Impatiences >>という2枚のレコード、そしてリュック・フェラーリ作品<< Éphémère I & II >> が発売されます。この2枚のレコードは、先ほどの<< Labyrinthe De Violence >> のジャケットから続くらせんイメージのデザイン。
なお、「即興のエクササイズ」に使われたGOLとブリュンヒルドさんのきらびやかな衣裳はパリの「メゾン・ルージュ」に展示してある歴史的にとても貴重なものだそうです。裏ジャケもすごく素敵です。
また、この年、リュック・フェラーリとジェラール・パトリスの共同監督によって作られた映画「大いなるリハーサル」のDVDが発売されました。
このDVDには「大いなるリハーサル」から
・ヴァレーズ
・メシアン
・ヘルマン・シェルヘン
の5篇が納められています。
またピアノ作品「ディダスカリー2」のレコードがSub Rosaからリリースされたのがこの年。
Luc Ferrari - Didascalies 2 at Discogs
Luc Ferrari - GOL, Brunhild Ferrari* - Exercices D'Improvisation (Vinyl, LP, Album) at Discogs
Brunhild Ferrari* - Tranquilles Impatiences (Vinyl, LP) at Discogs
Luc Ferrari - Éphémère I & II (CD, Album) at Discogs
Gérard Patris et Luc Ferrari - Les Grandes Répétitions (DVD) at Discogs
2011年、独WERGO さんから「小品コレクション」を含む<< Souvenir, Souvenir >>、eRikmとのちょっと<< Labyrinthe De Violence >>を思わせるジャケットの<< Visitation >>が Alga Marghen より、さらにこれまたニューヨークの名門Mode Recordsさんからは、ブリュンヒルドさんによるコラージュをジャケットに使用した名盤 << Madame De Shanghai >>、そして長らく発売が待たれていた井上郷子さんと松倉利之さんによる<< Piano & Percussion Works >>が hat[now] シリーズのひとつとして、また“La Muse en circuit ”(「回路の詩神」協会)より再びリュック・フェラーリ賞のコンピレーションアルバムである<< Composer Le Réel >>が発売されました。
この年、第一回となる「プレスク・リヤン賞( Prix Presque Rien)」が開催されました。この2年に一度開催されるリュック・フェラーリが遺したサウンド・アーカイブスを自由に使用して作品を創作するという、ユニークな国際コンクールは、この後世界中の作曲家からの応募を受けるようになります。
(ここで読者の皆様には「リュック・フェラーリ賞」と「プレスク・リヤン賞」の違いについてよくご理解いただけたと思います)
また12月にはブリュンヒルド・フェラーリさんとジャクリーヌ・コー監督が揃って来日され、各地でリュック・フェラーリを軸としたイベントが開催されています。
ただこの頃の日本では、リュック・フェラーリを知る人の間でさえ、まだ Association Presque Rienの存在を知る人は少なかったようです。
Luc Ferrari - Souvenir, Souvenir (CD) at Discogs
eRikm & Luc Ferrari - Visitation (Vinyl, LP) at Discogs
Luc Ferrari - Madame De Shanghai - Après Presque Rien - Visage 2 (CD) at Discogs
Luc Ferrari - Satoko Inoue, Toshiyuki Matsukura - Piano & Percussion Works (CD, Album) at Discogs
Various - Composer Le Réel (CD) at Discogs
【参考記事】
プレスク・リヤン賞【2】 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
(参考)
・MUDIC DOCUMENTS 2011 #12 - n.b.m 通信
・コーポ北加賀屋: 音を視る ― リュック・フェラーリとアメリカ実験音楽の巨匠たち 映画で聴く電子音楽の異才 ~リュック・フェラーリ~
・課外プログラム(クローバーシアター:過去の一覧)|在学生|同志社大学
2012年秋、ブリュンヒルド・フェラーリさんが来日コンサートおよび東京藝術大学と武蔵野美術大学での特別講義のために再来日されました。この来日コンサート後「プレスク・リヤン協会日本支局開設準備室」が構想され始めることになります。
この年は東京では映像インスタレーション「思い出の循環」が武蔵野美術大学で、また「リュック・フェラーリとほとんど何もない」が同志社大学で上演されました。神戸ではジーベックホールでサウンド・インスタレーション「ミュージック・プロムナード」の上演とともにコンサート、また大友良英さんがブリュンヒルドさん、永田一直さんと西麻布SuperDeluxで共演しました。2003年の来日時から9年を経ての邂逅となったこの時、まだ翌年に大友さんが劇中の曲を手がけられた「あまちゃん」大ブームが到来するとは、誰も予想だにしていませんでした。
前年に引き続き << Jetzt >>(今)<< Und So Weiter >>がWERGO から、また「ほとんど何もない」のレコードが INA - GRM から素敵な装丁で再発され、そして12月の年の瀬ぎりぎりに、Sub Rosaより発売されたのが、リュックとブリュンヒルドのフェラーリ夫妻の共同名義による2枚組CD<< Programme Commun (協働プログラム)>>でした。
このライナーノートはタワーレコードのintoxicate誌にも掲載されました。
Luc Ferrari / Brunhild Ferrari* - Programme Commun at Discogs
Luc Ferrari - JETZT (CD) at Discogs
Luc Ferrari - Presque Rien (Vinyl, LP) at Discogs
L. Ferrari* - Und So Weiter / Music Promenade (CD) at Discogs
【参考記事】
武蔵野美術大学特別講義 映像インスタレーション『思い出の循環』"cycle des souvenirs" 採録 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
2013年、「プレスク・リヤン協会日本支局開設準備室」が正式に立ち上がり、日本での支局開設に向けて動き始めます。同時に未発表の << Femme Descendant L'Escalier >>がプレスク・リヤン協会の年間会員限定でリリース。
フランスで30年以上に渡り行方不明になっていた「スポンタネ4」がひょんなことから発見され、パリの意欲的なレコード店Souffle Continuで上映されたのがこの年。
前年CDで先行発売されていた「協働プログラム」が2013年初頭、Sub Rosaの2種類のレコードとして発売されます。
そのうち1種類はフェラーリ・カラーともいうべき、美しい赤のピクチャーレコードで、ジャケットにもリュックさんの一筋縄ではいかない「けれん味」がたっぷり反映されています。
また2007年に録音されていた<< Symphonie Déchirée >>がDVDを含む3枚組として夏にL'empreinte digitaleからリリースされた後、満を持してshiiinより発表されたのが、<< Contes Sentimentaux (センチメンタル・テールズ)>>。音源化にまつわる幾多の苦難を乗り越えて、ようやく出版されたこのヘールシュピール作品が日本でも紹介されるようになったいきさつについては、このブログでも折に触れて紹介してきました。
また2013年は第二回の「プレスク・リヤン賞」が開催され、日本からも多数の気鋭の作曲作品の応募と最終選考通過作が出、その中から佐藤亜矢子さんの作品<< small stroll >>が3位に入賞しました。
またLa Muse en circuit (「回路の詩神」協会)からはこの年もリュック・フェラーリ賞のCDが出版されています。
ジャクリーヌ・コー監督が2002年に上梓した「リュック・フェラーリとほとんど何もない」の英語版が出版されたのはこの年。(ちなみに日本語版が出たのはさかのぼること7年前の2006年。この本の最初の外国語訳でした)
Luc Ferrari - Programme Commun (Vinyl, LP) at Discogs
Femme Descendant L'Escalier (For members of Association Presque Rien)
Luc Ferrari - Symphonie Déchirée (CD, Album) at Discogs
Brunhild* & Luc Ferrari - Contes Sentimentaux (CD) at Discogs
Correspondance - Concours Luc Ferrari 2012 / 2013 - Muse en circuit : Muse en circuit
Almost Nothing with Luc Ferrari by Jacqueline Caux ― Reviews, Discussion, Bookclubs, Lists
【参考記事】
本「リュック・フェラーリとほとんど何もない」英語版発売のお知らせ - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
2014年。
「即興のエクササイズ」がイタリアのStradivarius からCDで、そして「トートロゴス3」がル・アーブルのPiedNu からリリースされ、この年はちょっとした即興年の趣を見せました。
プレスク・リヤン協会に映像部ができ、公式Vimeoアカウントでは現在、この年のGOL&Brunhild Ferrariのル・アーブルでのこのCDの発売記念となるコンサートが配信されています。
同志社女子大学と武蔵野美術大学の主催により、プレスク・リヤン賞2013のコンサートが開催されたこの秋、小沼純一さん、川崎弘二さん、檜垣智也さんと椎名亮輔さんにより、プレスク・リヤン賞と世界の電子音楽をめぐっての鼎談が行われました。これらも
の2本の動画としてアップされています。
またこの年の秋ブリュンヒルド・フェラーリさんが来日され、ジム・オルークさんとのコンサートを開催するとともに、「少女たち」「スポンタネ4」「ほとんど何もない、あるいは生きる欲望」といった、これまで見る事ができなかった貴重なリュック・フェラーリの映像作品を紹介することができた記念すべき年でもあります。
また、これまで日本支局開設に向けて準備を続けて来られた皆さんの熱意と努力がようやく結実し、「プレスク・リヤン協会日本支局」として正式に活動を始めることができるようになったのもこの年です。
Luc Ferrari - GOL / Brunhild Meyer-Ferrari - Tautologos III / Havresac (CD, Album) at Discogs
Luc Ferrari, Ciro Longobardi - Exercises D'Improvisation (CD) at Discogs
【参考記事】
リュック・フェラーリ監督作品が日本で初めて東京と京都で特別上映!(その1) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
2015年。リュック・フェラーリ没後10年となった昨年はドイツの気鋭のレーベルTestklangから「日記」が発売されました。ピアノを担当しておられるのは2013年に日本でもリュック・フェラーリ作品を含むコンサートをされた独在住のピアニスト中村麗さん。
またNewYorkのMode Recordsからは2作品がリリース。まずフェラーリ夫妻との交流も深いケルンのアーティストVincent Royerがリュック+ブリュンヒルド・フェラーリ作品と組んだ<< Ephémère >>、そして「大いなるリハーサル」から2篇を編んだDVDが発売されました。
また11月には第三回目となる「プレスク・リヤン賞2015」が開催され、日本から応募した梅沢英樹さんの作品<< Le Néant >>がプレスク・リヤン賞を獲得したことも忘れられないニュースです。
書籍に目を配るとこの年、佐々木敦さんの本「4分33秒論」でリュック・フェラーリについての話が出ていました。
また「アルテス電子版」上では、鈴木治行さんによりリュック・フェラーリについての話がようやく始まりかけたところでしたが、2015年9月号で残念なことに終刊になってしまうということもありました。
Luc Ferrari - Journal Intime - Testklang
Komuna// Warszawa Plays Luc Ferrari - Tautologos III (CD, Album) at Discogs
“Les Grandes Répétitions” - Stockhausen & Varèse
【参考記事】
【速報!】プレスク・リヤン賞2015が決定!日本からの作曲家梅沢英樹さんの作品が受賞! - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
中村麗「リュック・フェラーリの曲「Und So Weiter」との出会い」 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
そして2016年。
「2015年最も気になったアーティストは?」というTOWER RECORDS ONLINEの問いに、<< the shader >>を発表したagraphさんは「Brunhild Meyer-Ferrari」と答えてくださっています。
〈2015年アーティストの一番のお気に入りCDは?〉agraph編 - TOWER RECORDS ONLINE
ようやく日本においてもリュック・フェラーリとともにブリュンヒルド・フェラーリさんの仕事について注目し、発言していただける人が出始め、そして今や実際のリュック・フェラーリと対面した世代よりもはるかに若い世代が、さまざまな形で彼の作品や情報にアクセスし、楽しみ、刺激を受け始めているという点が、リュック・フェラーリの可能性の深さを象徴している気がします。
(参照)
作曲家の渡辺愛さんの寄稿
【寄稿】 ブリュンヒルドとリュック ー 奇跡の作曲家カップル ー - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
そして
プレスク・リヤン協会設立10年目となる本年、1冊の本が日本で発売されました。
リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ | アルテスパブリッシング
これまで外国語の網目に絡めとられるあまり、自由奔放な理解に任されたまま、一般にはその楽しさや歴史的平野を十全に味わう事の難しかった「ヘールシュピール」の地平をフェラーリ夫妻の傑作「センチメンタル・テールズ」とともに切り拓き、また彼によって書かれた「自伝」を完訳し、さらにこれまで文書化されてこなかったリュック・フェラーリの正史をも付した、日本におけるリュック・フェラーリ紹介の決定版です。
この本は決定版であると同時に、新しいリュック・フェラーリ愛好家、研究者への扉を開く本でもあります。
また、Blue Chopsticksレーベルからいくつものリュック・フェラーリ作品をリリースしているデヴィッド・グラブスさんは「レコードは風景をだいなしにする ジョン・ケージと録音物たち」で1章をリュック・フェラーリに割いています。フィルムアート社からこの日本語版が出たのも今年、2016年です。
今年、そして今以降、どのような形でリュック・フェラーリ、そして関連作品が出て来るかはその姿や量も未だ予想もつかないものがあります。
なぜなら10年前の2006年6月30日には、10年後の2016年、これほど豊かな形でリュック・フェラーリの作品群が、私達の前に提示されるであろうことを誰も想像できていなかったと思うからです。
没後10年を経てなお、このように世界中で、継続的にリュック・フェラーリの作品群が出版され、演奏され、愛され続けていることを、ぜひたくさんの方に知っていただきたいと思います。
そして、これらの出版物、制作物がジャンルや枠組みといったものをすこしづつ離れ、乗り越え、溶かし組み合わせていった結果、どれ一つ同じようなものはなく、それぞれがリュック・フェラーリに対する愛情にも似た気持ちが味として出たものであることを感じ取っていただけたなら、これ以上の喜びはありません。
またこの場をお借りして、日本語ではありますが、これらすべての作品の出版、制作に関わられた皆様に、改めて深い御礼と感謝の気持ちを捧げたいと思います。
以上駆け足につぐ駆け足での紹介でしたが、この10年はプレスク・リヤン協会にとって、さまざまな意味で、決して平坦な道のりではありませんでした。プレスク・リヤン協会では随時、年間会員、賛助会員を募集しております。
詳細はこちらをご覧ください。
リュック・フェラーリは20世紀芸術の可能性を広げましたが、プレスク・リヤン協会は彼と彼の芸術を通じ、今後とも芸術の無限の可能性を信じて、歩みを止めることなく進んでいきたいと考えています。
【参考過去記事】
「プレスク・リヤン協会への入会も更新も、とても簡単に!」 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)