リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

特集:ブリュンヒルド・フェラーリ来日企画2014ルポ(その3)

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

先週から始まった「特集:ブリュンヒルド・フェラーリ来日レポート」では10月に開催されたブリュンヒルド・フェラーリ来日企画の模様を当日のスタッフからのルポ、いただいたメールや動画等の様々な情報を元に編集してお届けしています。

(以下敬称略)

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今日は10月20日に神戸塩屋の旧グッゲンハイム邸 で開催された”ブリュンヒルドフェラーリ、ソロ・コンサート”の模様をお伝えしていきます。

 

旧グッゲンハイム邸は塩屋の海沿いに建つ美しい洋館で、明治42年にドイツ系の貿易商のために建築されました。

コロニアル様式の邸宅は随所に美しい装飾がこらされています。

また最近ではバラエティに富んだ素晴らしいコンサートが開催されていることで、国内は元より、海外のアーティストの間でもぐんぐんとその名が知られるようになってきているようです。

 

これまでヨーロッパ各地で演奏してきた ブリュンヒルド・フェラーリですが、これまで日本では作曲家としての彼女にスポットが当たる機会はほぼなかったといってよく、また、まとまった形での単独コンサートが行われたことはありませんでした。

そのような中で今回、クリストフ・ヒーマンの病気欠場によるものとはいえ、彼女の作品をメインとしたコンサートを開催することができたことはプレスク・リヤン協会日本支局にとっても大きな誇りとなりました。

 

当日の関西地方は秋雨が降ったり止んだりするあいにくのお天気の中、熱心なフェラーリ・ファンの方々が来場下さいました。

まず露払いに「スポンタネⅣ」が上映されます。実は日本ではこの旧グッゲンハイム邸での「スポンタネⅣ」の上映が初の公式上映となりました。

続いてついに日本初のブリュンヒルドのコンサートの幕が開きます。

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曲はまず” Le piano englouti  ~the sunken piano~ ”。

彼女の手さばきがこの洋館独特の反響と合わせて幽玄ともいえる音場を作り出し、場内には潮風が流れ込んできているような雰囲気さえ憶えます。

 

 

曲が終わる度に本人による短い解説があり、その場にいて下さった椎名亮輔氏による臨時の通訳もあってお客様にも彼女の説明を理解していただけたようです。

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協会スタッフの方に話を伺ったところ、「グッゲンハイム邸の音響かなりよくて、個人的には音の廻り方がすごく心地よかった」というお話でした。

またクリストフも昨年の来日でのグッゲンハイム邸の経験を絶賛していたということです。

 

続いて Extérieur Jour (2014)。

先日のレポートでもお伝えしたように、この曲は長野県茅野市で毎年開催されている「音風景の可能性」が彼女に委嘱した作品です。

 

遠方からのお客様に配慮してやや短めのプログラムとなり、この日最後に演奏されたのは当ブログでも度々取り上げている、彼女の代表作ともいうべき

” Tranquilles Impatiences ”です。

 

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2010年にブリュンヒルドはこの曲をリュック・フェラーリの「そして音はガリーグをめぐる」と「即興の練習」をベースにして作曲しました。

「だんだんと、知覚バランスがぐらぐら狂っていくような、そんな感覚を楽しんでもらえたら幸いです」と彼女がプログラム・ノートで述べているように、聴きこむほどにその完成度の高さがわかってくるような静かで、とても心地よい楽曲です。

 

響き合い打ち消し合い、そして増幅しながらも、決してひとつところに留まることなく、しかし深く深く澱んでいるような、まるでいくつもの円が渦を巻き起こすことをためらうように広がり続ける感さえ受けるこの曲は、くろぐろと塗り込まれたかのようでいてしっかりと息づいている山と海を合わせ持つ夜のグッゲンハイム邸ににぴたりとはまった素晴らしい1曲だったということです。

 

 

今回でブリュンヒルドフェラーリ来日レポート(コンサート編)は最後になりましたが、この一連のコンサートを企画共演いただきましたJim O'Rourke氏、グッゲンハイム邸の森本アリ氏、SuperDeluxeのMike Kubeck氏、また発案されたChritoph Heemann氏、共演いただいたOkkyung Lee氏に御礼申し上げます。

またご来場いただいたすべてのお客様とお力添えいただいた皆様方、そして最後にこの原稿をまとめるにあたって貴重な情報と助言をいただきましたプレスク・リヤン協会スタッフの皆様に深く御礼申し上げます。

 

次回からは同志社大学ならびに武蔵野美術大学で行われた「監督 リュック・フェラーリ~作曲家が「それ」を撮影する時~」の講演の模様をお伝えしていく予定です。

 

 

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