全国2万5千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんにちは。
プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)日本支局開設準備室では、「プレスク・リヤン賞2013」の審査員を務められた椎名亮輔氏による「審査を終えて~プレスク・リヤン賞2013講評~」を4日間に分けて連載しています。
日本版ポスター
昨日は多種多様なバックグラウンドを持つ7名の審査員団が、16作品にまで絞り込まれた予選通過作の最終審査に入るまでをお届けしました。
残った応募者がリュック・フェラーリのサウンド・アーカイブを使用する時に共通していた特徴とは一体?そして応募者のデータから見た今日の日本の電子音楽のレヴェルは?プレスク・リヤン賞2013の全貌が今、資料の公開をも含めてゆっくりと明らかになっていく!
タイトルこそ「講評」となっているものの、同時に生々しい審査のその場所にこちらも同席しているかのような、臨場感溢れる素晴らしいレポートにもなっています。
一挙全文掲載、ということも考えましたが、このドキドキ感をじっくりと味わっていただくべく、4回に分割し、毎日連載の形でお届けすることにいたしました。ご了承ください。
また、今日初めてこのブログにたどり着いた方、この連載第一回目はこちらから。
「プレスク・リヤン賞2013(Prix Presque Rien2013)講評」【1/4】 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
(全文を一息に読みたい!という方に向けては、今月末に全文を一挙掲載する予定ですのでそちらもご覧ください)
なおプレスク・リヤン賞2013の結果、および審査員団(7名)についてはこちらの記事
速報!Prix Presque Rien 2013 (プレスク・リヤン賞2013) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
また、受賞者についてのプロフィールはこちら
「プレスク・リヤン賞2013」入賞者の紹介です! - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)
をそれぞれご覧ください。
「審査を終えて~プレスク・リヤン賞2013講評~」(2)
椎名亮輔
しかしそこに、出来る限りの多様さを導入して、結果の画一化を避けようという努力が見られることもまた事実である。それは先述の審査員メンバー表を見ていただければ、了解してもらえることと思う。国籍(そして/あるいは)文化に関して言えば、ドイツ・フランス・スイス・日本があり、職業に関して言えば、作曲家・ラジオ関係・大学関係があり、性別はもちろん男性4人、女性3人、年齢層も見た限り20代か30代から70代まであったと思う。趣味に関しても、クラシック系もあり、ポップ系もあり、前衛や実験的傾向ももちろん考えられる。しかし、その誰もがリュックの音楽に対して深い理解と愛(それぞれの解釈であっても)を持っていることでは共通なのである。
今回の審査会議においてはこうして様々なことが語られたわけだが、それらを踏まえて、これから今回のコンクールについてのいわば「講評」めいたものを少し書いてみよう。しかし、これから書くことは最終的にはあくまで私個人の感想であることを頭に入れた上で読み進めて欲しい。(つまり、その場でそれぞれの審査員が発言したことを基にしているとは言っても、最終的にはそれは私の ― 今書きつつある私の ― 記憶に基づいているのだから。)全体的に質の高い作品ばかりが16曲残った、あるいはもちろんそのような作品を第一次審査で残した(この審査はブリュンヒルド・フェラーリとダヴィッド・ジスがあたった)ということになる。そして、また注目すべきことは、その中に今回入賞したアヤコ・サトウの作品も含め、全部で5人の日本人作家が残ったということだ。ほぼ三分の一が日本人であったことになる。これは国籍別ではトップで、ちなみに次にフランスが3人、アメリカ・ベルギーから2人、あとはイタリア・コソヴォ・カナダ・フィンランド各1人である。日本の電子音楽のレヴェルは高いのだ、と素直に考えていいのではないだろうか。
また年齢別で言うと、作品に添付されていた資料などでわかる者だけ見ると、30代が多く、合計5人、20代と40代が各2人、60代が1人、残り6人は不明である。しかし感じとしては、やはり大部分が30代なのではないだろうか。ここでも特筆すべきは一番若い20代2人が両方とも日本人であったことだ。大学出たてか、あるいはまだ大学生かも知れないが、いずれにせよ日本の音楽の高等教育において、電子音楽・コンピュータ音楽系の質がかなり高いことを示しているように思う。
16曲全体を聴いた上での感想と言えば、まず全般的に5分から10分くらいの小曲に皆うまくまとめ、その中で自分の主張したいことを個性的に語っている、ということだ。またそれぞれのフェラーリ音源の使用の仕方も一つとして似たようなものがない。もう少しフェラーリの声なども聞こえてくるかとも思っていたが、それほど多くなかった。つまりは、かなり抽象度の高い作品が集まったと言えるだろう。しかし、水の音、ため息、爆竹、足音、引き裂く音などは、フェラーリ音源の特徴をよく生かし、またそれぞれの作品内のコンテクストの中でうまく使用されていたと思う。(第3回へ続く)
最終候補16作品のおおまかな内訳が出てきました。応募作と応募者の多様さは、まさに今回の支局開設準備室のコピーであった「リュック・フェラーリとほとんど何でもあり」そのものですね。
明日はプレスク・リヤン賞2013、そして2位3位の決定場面が掲載される予定です。お楽しみに!
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