全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。
今月の月報の最後のほうでも触れられた、Jacqueline Caux(ジャクリーヌ・コー)による最新作『Bad Girls des Musiques Arabes - du VIIIè siècle jusqu'à nos jours』についてどうしても言わせて!ということで、今日はわたくし渡辺愛が寄稿いたします。
リュック・フェラーリのドキュメンタリー『Presque Rien avec Luc Ferrari』やジェフ・ミルズ主演映画『Man From Tomorrow』で知られる女性監督、ジャクリーヌ・コー。
その最新作、タイトルは『アラブ音楽の“バッド・ガール”たち ~8世紀から現在まで~』とでも訳しましょうか。
TRAILER - Bad Girls des Musiques Arabes - du VIIIè siècle jusqu'à nos jours / Jacqueline Caux
私ごとをひとつ......。ジャクリーヌが2011年にブリュンヒルド・フェラーリとともに来日した際、当時フェラーリ研究を始めたばかりだった私は歓迎の意味も込めて上映会兼ライブを落合のライブハウスでブッキングしました。
彼女の映画『プリズムの色、時間のメカニック』『引き裂かれた交響曲の物語』を上映したんですが、初対面の彼女に「前説するから通訳して!」っていきなり言われて激焦りで通訳したのを覚えています。とにかく信じられないくらいパワフルでチャーミングなマダムです。
今回の「バッド・ガールズ」、アラブのレジェンド的なミュージシャンからこんにち活躍する若手ラッパーまで多彩な女性たちの生き様が紹介されています。アラブ社会、宗教、そして家族といった枠組みが女たちに課してきた不当な役割や不敬に、彼女たちがどう抗ってきたのかを克明に映し出しています。Oum Kalthoum, d’Asmahan, de Warda El Djezaïri, Cheikha Remitti…うーん、初めて聞く名前ばかりですが、興味津々。
「女の子は公共の場で歌うことが許可されていなかった、'女は表現してはならない’と...」とインタビューで語る女性、「他人のことなんて計算しない、私は私の人生を生きる」と力いっぱいラップするエジプトの若い女の子、と1分半のトレイラーを見るだけでもこみ上げるものがあります。
“私は女性について話したかったのです。なぜならそれは私のコミュニティだからです”というジャクリーヌのストレートなメッセージが、音楽とともに刺さります。
そして彼女のもう一つのモチベーションは、アラブ文化へのリスペクト。
フランス社会でのアラブ人への攻撃は今日も問題になっており、未だ年配者の間では植民地主義からくる人種差別の意識が根強く残っています。特に郊外に住む若者にとっては、こうした親世代・祖父母世代の影響力が大きいため、差別が連鎖してしまうのです。
アラブ文化を知り、関心を持てば偏見もなくなる。ジャクリーヌはそう願いを込めて、1時間20分のフィルムに千夜一夜のような美しさと豊かさを備えた物語を詰め込みました。Samira Ahmadi Ghotbiによる繊細なドローイングにもご注目。
現在ポストプロダクションに入ったばかりで、これからアフレコやミックス、翻訳や字幕入れなどの作業を控えています。ただ、自主制作につきこれらにかかる資金を自力でまかなわなければなりません。
これまでインディペンデントに妥協なく作品を作り続け、20年で14本の映画を撮った彼女。今回、初めてクラウドファンディングに挑戦します。
私が私らしく生きること。だれかがその人らしく生きること。
この映画はそんな社会を照らす美しい星になり得る気がします。
寄付金は手頃な10ユーロから。私はDVDか本がもらえてステッカーまでついてくる、25ユーロのプランで寄付します。
(そして願わくばまた、日本でも上映会できたらな~。。なんて夢見つつ。。。)
ジャクリーヌ、がんばって!
ジャクリーヌ・コー監督「バッド・ガールズ -Les Bad Girls des musiques arabes - du VIIIe siècle à nos jours-」クラウドファンディングへの参加はこちらから↓