リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

” parcours confus ”(青版)による作品解説

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

先日プレスク・リヤン協会から頒布が開始された作品目録「parcours confus」(青版、53+16pages)。

フェラーリファンなら確実に手に入れておきたいマニア垂涎の一冊です。

 

これまでも限定版として改訂や増補を加えつつ緑版、黄色版などが頒布・販売されてきましたが、今回も前回の黄色版の頒布当時にはなかった情報や索引が加えられています。

リュック・フェラーリとほとんど何もない」(J・コー著、椎名亮輔訳)が発売された2006年当時にはあいまいだったり、省略されていた情報なんかも整理されています。

 

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今回の表紙の色は青、というよりはちょっと薄すみれ色がかった淡い色。

 

 

今日はこの中からウィキペディアや上の本に載っていなかった作品をいくつかご紹介していきましょう。

 

・Capricorne (山羊座) 1958年。 

短編映画用に制作されたミュージック・コンクレート 。リュック・フェラーリが大好きだったというヘンリー・ミラー『南回帰線 Tropique du Capricorne』との関係はないそうです。

 

・6 pour 4  (4のための6) 1962年。

GRMの6人の作曲家による4篇のミュージカルのための楽曲(初期タイトル)。

この6人とはリュック・フェラーリ、フランソワ・ベール、ベルナール・パルメジャーニ、エドガルド・カントン、フランソワ=ベルナール・マーシュ、イヴォ・マレクで、1963年4月にベニスで演奏された際には "Composé composite "として発表されました。

 

・La Famille Bang (バン一家)  1966 - 1969年。

説明に「詩的でエロティックで感傷的な創作ミュージカル」とありますが、詳細は不明です。ただこの「Bang」は「Big Bang」からきているそうで、この時期の米ソ宇宙開発競争や、アポロ計画といった宇宙ムーブメントを反映したものになっているのかも知れません。ちなみにリュック・フェラーリには2部作のAllô,ici la terre(もしもし、こちら地球)やLoin de l'équilibre(バランスから遠く離れて)といった宇宙をイメージした作品がこの他にもいくつか存在しています。(2014年にフランス国立宇宙研究センター(CNES)でL'ensemble Laborintusによるフェラーリ作品のコンサートがありましたね)

 

Passage pour mimes (マイムのための音楽) 1959  劇場用ミュージック・コンクレートのための習作。

2014年に開催された日本でのプレスク・リヤン賞2013コンサートで演奏されたÉchantillon pour mime (1959)  の習作となる作品。 

ブログから拾ってみると、「1959年にパリのギメ美術館において開催された、「イマージュと動き」という音楽付きの映画とマイムを上演する会のために作曲されたミュージック・コンクレート。

当時、フェラーリはジャック・ルコックの学校に通ってマイムを学んでおり、この作品はルコックのマイムのために作曲された。本来のタイトルは「見本(échantillon)」だけであった。」ということで、Passage pour mimes→échantillonÉchantillon pour mimeとなったことがわかります。

 

” parcours confus "にはこれ以外にも「ほとんど何もない」には未掲載だった作品があがっています。

ご興味のある方は日本支局までお問い合わせください。

 

 

なお、「ほとんど何もない」に掲載されているリスト「概念の開拓」シリーズ部分に誤記があるようですのでお伝えしておきます。

 

(誤)Impro-Micro-Acoustique (即興ーマイクー音響)概念の開拓6

(正)Impro-Micro-Acoustique (即興ーマイクー音響)

 

(誤)Les Anecdotiques (Exploitation des Concepts Nº 7)  (逸話的なものたち(概念の開拓7)

(正)Les Anecdotiques (Exploitation des Concepts Nº 6)  (逸話的なものたち(概念の開拓6)

 

「概念の開拓」シリーズは全六作品です。

 

 

ぜひ重版の際には訂正してもらえたらいいですね。

 

(本稿の製作にあたってはリュック・フェラーリとほとんど何もない」(ジャクリーヌ・コー著、椎名亮輔訳、現代思潮新社2006,Presque rien avec Luc Ferrari entretiens textes et autobiographies imaginaires , Jacqueline Caux,Main d'Oeuvre 2002)”parcours confus"(Association Presque Rien 黄色・青版)および ” Portraits polychromes (INA 2001)”を参考にしています)

 

【参考記事】

 

「宇宙旅行のリュック・フェラーリ」 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

本「リュック・フェラーリとほとんど何もない」英語版発売のお知らせ - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

リュック・フェラーリと世界の電子音楽~プレスク・リヤン賞をめぐって~(プレスク・リヤン賞2013コンサート)作品と作曲家の紹介(中盤) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

リュック・フェラーリとほとんど何もない―インタヴュー&リュック・フェラーリのテクストと想像上の自伝

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リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ──あるいは自伝としての芸術

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