リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

リュック・フェラーリとの出会い5

というわけで、いろいろと『ユリイカ』には書かせてもらっていて、一時期、大里さんがフランスにいた頃に担当だった「カルチャーマップ」のフランス篇も、時々、担当させてもらったりした。その時は、それらの連載を一つにまとめて「記憶」についての一書をものしようなどと、考えていて、それは我が師ダニエル・シャルルの影響もあって、つまりシャルルはもちろん音楽の関係で記憶というものについて注目していたりした(アドルノとかハイデッガーとか……そして、もちろんケージ!)のだが、そこに私は当時フランスで問題になっていたナチスとの関連とか、アルジェリア戦争とか、精神病院の話とか、まあいわば、歴史的・政治的・社会的な(哲学も、つまりポール・リクール)記憶の問題も絡めたいとも思ったわけだった。しかし、すでに「記憶論」というのは、確か港千尋氏がすでに書いていて(彼とはパリでご近所であったし、ちょっと行き来もしたのだが、すっかりご無沙汰)、二番煎じもいやなので、ニーチェを持って来て「忘却論」というのを書いていたりしたのだが(これもダニエル・シャルル由来でもある)、結局ものにはならなかった。そんなこんなで『ユリイカ』編集部に何となく話が少しはしやすくなったところで、これは全くの思いつきだが、現存のフランスの作曲家にインタビューしたら面白いものになるんじゃないか、と思ったのだった。もちろん、ブーレーズやいまだにご健在(?)のデュティユーなどもいたけれども、このへんは何となくアカデミック過ぎて(ブーレーズは実は私の卒論のテーマでもあったのだが)、近付きにくい。この辺は三光洋君(フランス科の後輩で、今は立派な音楽ジャーナリストにおなりになっておられます。ちなみにお父さんは高名なワーグナー学者。)に任せて、自分としてはやはりファンとして注目しているフェラーリにまず一番に話を聞いてみたいと思ったのだった。(あとは、ピエール・アンリ、これは後にインタビューが実現した。そしてフランソワ・ベール、これはまだ。これからかな……?彼とは、一度何かのシンポジウムで一緒になった時に、アドレス交換までしたのだったが ― 著書も貰った記憶がある ― その後、交友が途絶えてしまって、今に至っている)。(続く)(椎名亮輔)