リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

リュック・フェラーリ監督作品が日本で初めて東京と京都で特別上映!(その1)

 

全国2万5千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

今日はいよいよ今週から武蔵野美術大学(17日、2本)と京都の同志社大学今出川)(21日ー第一弾、28日ー第二弾)で開催されるリュック・フェラーリの作品上映とブリュンヒルドフェラーリ夫人による解説イベント

 

「監督 リュック・フェラーリ~作曲家が「それ」を撮影する時~」

 

で特別上映される映像作品4本の中から、第一回として17日(金曜)の武蔵野美術大学、21日(火曜)の同志社大学で上映される2本について、ちょっと詳しくご紹介していきます!

(なお、スポンタネ4については上記2会場に加えて、20日の神戸塩屋の旧グッゲンハイム邸ならびに26日の六本木スーパーデラックスのコンサートでも上映されます!!)

同志社大学で28日に上映される2部作「ほとんど何もない、あるいは生きる欲望」については後日掲載いたします、お楽しみに!)

 

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上映日程についてはこちらからご覧ください。

必携!リュック・フェラーリ関連イベントまとめ(2014秋版) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

今回上映される作品はどれも元々16ミリで撮影され、監督作の「少女たち、あるいはソシエテⅢ」、「ほとんど何もない、あるいは生きる欲望」は西独のテレビ局N.D.RS.W.Rで公開されました。

やや経年劣化などによる傷みや媒体の劣化があったものの、これまで日本でこれらの作品がまったく紹介されることなく「幻の作品」となっていたこと、またリュック・フェラーリの芸術への理解を深めていただくには大変貴重なものであることなどを踏まえ、今回のブリュンヒルドフェラーリ夫人の来日を機に、特別に日本語字幕付きで上映していただける運びとなりました。

日本語字幕がついたことで、おそらくご覧いただく方はリュック・フェラーリの魅力に改めて気づいていただけると思います。

 

 

特に「少女たち、あるいはソシエテ」と「ほとんど何もない、あるいは生きる欲望(第一部:コース・メジャン、第二部:ラルザック高原)」は今回のブリュンヒルドフェラーリ夫人の来日に伴い、トークと合わせて特別に上映できる作品となっています。日本語字幕付きで見ることのできる、大変貴重な機会となっておりますので、ぜひぜひお見逃しなく!

 

 

若き日のリュック・フェラーリやパルメジャーニが出演している「スポンタネ4」(SG・パトリス監督)については既に当ブログの「「フェラーリ地帯(ライン)」(第五回「Spontané 4」)でもお知らせしました。

 

 

スポンタネⅣ”

 

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” SPONTANE Ⅳ リュック・フェラーリがアマチュア演奏者とプロ演奏者のために1962年に作曲した作品で、このフィルムはその演奏風景を撮影すべくフランス国営放送の中にあったG.R.I(映像探求グループ)が制作し、ジェラール・パトリス監督によって撮られました。

 

この、「各番号毎に組み立てられた図形楽譜を二人の指揮者がアマ側とプロ側に別れ、演奏するパートのひとつひとつの音に即時に対応して音を出していく」という構成の成立と演奏者を3台のカメラは生々しく追っていきます。

 

どういう曲になるのかを最初にリュック・フェラーリ(若い!)が解説し、演奏が始まっていくのですが、出演したコンスタンタン・シモノヴィッチやリュック・フェラーリの真剣な表情とは対照的に、演奏者はパルメジャーニ(なんとアマチュア側!)を筆頭にひとくせもふたくせもあるツワモノぞろい。

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ちょっとした隙のカメラ目線やあれやこれ、と、まばたきする間も惜しい位の楽しいショットが散りばめられています。

 

プロ側の演奏には「大いなるリハーサル」にも出演したSylvio Gualda(彼はストラスブール・パーカッション・グループの中心的存在であり、クセナキス等の作品にも欠かせない人物です) Diego Masson(アンドレ・マッソンとシルヴィア・バタイユGバタイユの元妻)の姉の息子であり、Music Vivanteの創設者)、Jacques Wiederkehrなど、今ではちょっと考えられない豪華なメンバーが集まっています。

 

そしてアマチュア側にはジェラール・パトリスの友人で、映像インスタレーション「思い出の循環」に広大な南仏の自邸を提供したフィリップ・ミュクセルやパルメジャーニ、またその横にLa belle Simone’s ことSimone Etienne、そしてさらにはブリュンヒルドフェラーリと、後に一時代を築くことになるメンバーが勢揃いしています。

 

長らく所在不明になっていたこの「スポンタネ4」ですが、昨年ジェラール・パトリス監督の娘であるイブ・シェフェール・パトリスが倉庫からこのモノクロームのフィルムを発見したことを機に、昨年ブリュンヒルドフェラーリがインストア・ライブで上映し、今回日本で上映することができるようになりました。

 

このプロとアマチュアのミックス感、あるいは真剣さとゆるさが程よく混じり合った15分の中に見応えのあるショットがいっぱい詰め込まれています。

リュック・フェラーリを知らない人から往時の音楽事情に精通した方まで、また映画好きから音楽好きまで、色々な方がそれぞれに楽しめる内容になっていると思います。

 

(ジェラール・パトリス監督はリュック・フェラーリとともにメシアンやヴァレーズ、セシル・テイラーなどを撮影した5部作「大いなるリハーサル」を制作したことで、名前をご存知の方も多いかと思いでしょう)

 

 

「少女たち、あるいはソシエテ

 

ドイツ随一の港町として知られ、好況に湧くハンブルクを舞台にした「少女たち、あるいはソシエテ」。軽やかに楽しめるこの短編は、N.D.R制作によるリュック・フェラーリ1967年の監督作品です。

 

 

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好奇心にあふれる5人の少女たち(いえ、むしろリュック・フェラーリ好みの若き美女たち、といった方がいいのかも……?)が、音楽やダンスなど、彼女達の身の回りにある好きなものやその生活ぶりについて赤裸々に語る姿や、くるくる変わっていくその表情をリュック・フェラーリは驚くほど丁寧にカメラに収めながら、そこにハンブルクの港の風景やロック、デパートでのウィンドーショッピング、商店街でのインタビューといったフェラーリらしい素材を巧みに重ね合わせていきます。

 

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一見ドキュメンタリーに見えつつ、音の選び方や使い方、また最後の「オチ」にいたるまでしっかりと「音」にこだわっている点など、監督としてだけでなく、作曲家、いい「耳」の持ち主としてのリュック・フェラーリのこだわりや遊び心が十二分に発揮されている絶品です。

この映画ではシマノフスキーと後述の「マンチェスター・プレイボーイズ」の音楽が使われていて、表向きリュック・フェラーリの作曲作品は使われていないのですが、そのことでむしろ全編を通してリュック・フェラーリの作品になっているということに、耳とカンの鋭い人は容易に気づかれることでしょう。

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今回は特に日本語字幕がありますので、これまでただリュック・フェラーリの作品を「聴く」だけだった方には彼がどういう「音」を切り取っているのか、なぜリュック・フェラーリの作品が幾重にも「面白い」のかも発見するがことができると思います。

下積み時代のビートルズも活動していたハンブルクのクラブで「マンチェスター・プレイボーイズ」の演奏で踊る少女たちの姿や、街頭インタビューのシーンを見れば、この鮮やかなモノクローム作品が日本でこれまで紹介されてこなかったことが不思議ですらあります。

 

 

いよいよ武蔵野美術大学での上映は17日(金曜日)の18時からとなりました。

東京では一回限りの上映となります。また当日はブリュンヒルドフェラーリ夫人と、今月2日にプレスク・リヤン賞2013で鼎談をしていただいた椎名亮輔同志社女子大学教授による対談もありますので、色々な秘蔵話も伺えるかもしれません!

 

 

入場無料の公開講座です。芸術の秋を満喫できるこの機会をぜひお見逃しなく!

 

 

 

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