リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

「リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ──あるいは自伝としての芸術」(1)

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

前回の記事でもお知らせした通り、本年3月、現代音楽ファン必読の書『リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ──あるいは自伝としての芸術』がアルテスパブリッシングより発売されます。

 

f:id:presquerien:20160109090905j:plain

 

リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ | アルテスパブリッシング

 

 

いよいよ今日はその一回目として本書のメインタイトルにもなっているリュック・フェラーリのヘールシュピール作品” Contes Sentimentaux "(センチメンタル・テールズ)について紹介していきます。

 

f:id:presquerien:20130629180303j:plain

 

 

『センチメンタル・テールズ』は1989年に南西ドイツ放送の番組のために制作されたフランス語とドイツ語によるヘールシュピール(オーディオドラマ、ラジオドラマ)作品。

 

リュック・フェラーリが自作を引用しつつ、色とりどりに紡ぎ出す小さな物語と打ち明け話。リュック・フェラーリ自身がフランス語で語る物語は夫人によってドイツ語に翻訳され(時にその立場を入れ替えたり、反応が加わったりしながらも)、時に艶やか、時に鮮やかな音響を伴って縦横無尽に時間軸の中に織り込まれていきます。

 

一聴すると「フェラーリ夫妻をディスクジョッキーに迎えたラジオ番組」のような雰囲気を持っているこの作品はしかしもちろん単なる「ラジオ番組」ではありませんでした。

このヘールシュピール作品のためにフェラーリ夫妻はまず念入りに細部まできめ細かな台本を作り上げ、放送の際には台本にさらに即興や当意即妙なアドリブでの掛け合いまでが行われました。

その結果、この作品はすみずみまで作り込まれた、非常に完成度の高いヘールシュピールとして放送当初より大変な評判を呼ぶことになったのです。

 

そして長らく「リュック・フェラーリの幻の傑作」としてこの作品はその存在こそ知られていたものの、「ヘールシュピール」というラジオで放送されるための作品であったことなどから長らく「音盤化は不可能」とさえ言われていました。

しかし2013年の夏、数々のレア音源を音盤化していることで知られるフランスのレーベルShiiinがさまざまな困難を乗り越え、ついにこの幻の全作品を豪華ブックレット付きの4枚組CDとして発表しました。

 

shiiin 8 - brunhild & luc ferrari : contes sentimentaux

 

 

2013年の発売当初、4枚組CDボックス+ブックレット、ポスター入りというボリュームで発売されたこの『センチメンタル・テールズ』は欧州を中心に熱い注目を浴び、現在ではアマゾンのデジタルライブラリーでその音源を購入することも可能となっています。

 

www.amazon.co.jp

 

Amazon.co.jp: Contes sentimentaux: Luc Ferrari: デジタルミュージック

 

リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ──あるいは自伝としての芸術』は今回ブリュンヒルドフェラーリ夫人の全面協力を得て、その台本に基づきつつ、作品の中で絡み合う独仏語での絶妙な掛け合いまでもが丁寧に訳出されていて、これを音源と読み合わせて聴くことで、ヘールシュピールとは何かやリュック・フェラーリの作品創作の秘密にも触れることができることでしょう。

 

さらに2013年に2枚組CD『プログラム・コマン』(共同プログラム)の発売以来、日本でも作曲家、またリュック・フェラーリとの制作上でのパートナーシップもより知られるようになってきたブリュンヒルド夫人と彼の共同制作の秘話も目に浮かぶように理解することができるようになっています。

 

 

リュック・フェラーリファンはもとより、これまでリュック・フェラーリを知らなかった方やウェブ上でリュック・フェラーリの情報をこつこつとあつめていた方、そして雰囲気だけで作品を聴いたり作ったり、また聴かされたりしていた方、そしてすべての芸術を愛する方に、ぜひ一度手に取って読んでいただきたい本です。

 

 

著者・訳者にはジャクリーヌ・コー著『リュック・フェラーリとほとんど何もない』(現代思潮新社)の翻訳を初めとして日本におけるリュック・フェラーリ研究の第一人者であり、また『デオダ・ド・セヴラック 南仏の風、郷愁の音画』で第21回吉田秀和賞を受賞している椎名亮輔さん、そしてドイツ語部分の翻訳ならびに解説にドイツのヘールシュピールの研究者であり、リュック・フェラーリのドイツ語作品の翻訳も手がけてきた筒井はる香さんが携わっています。

 

この本『リュック・フェラーリ センチメンタル・テールズ──あるいは自伝としての芸術』は現在アルテスパブリッシングのウェブサイトでの予約が始まっています。(プレスク・リヤン協会会員には予約での割引がございます。ご案内メールが届いていない方は日本支局までご連絡ください)

 

 

予約ならびに購入方法などにつきましては、ぜひこちらからご覧ください。

 

3月発売! リュック・フェラーリの「自伝」とヘールシュピールの傑作《センチメンタル・テールズ》、待望の邦訳! | アルテスパブリッシング

 

 

またこの4枚組CD「センチメンタル・テールズ」は以下のリンク先でも購入できる他、アマゾンのデジタルライブラリーでも音源のダウンロード販売が行われています。

www.art-into-life.com

 

www.amazon.co.jp

 

 

 

 

【関連記事】

association-presquerien.hatenablog.com