リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

「受賞者が語る<Prix Presque Rien(プレスク・リヤン賞)2017>」(後編)

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

前回に引き続き、今日も「受賞者が語る<プレスク・リヤン賞2017>」(後編)として受賞者の方に、ご自身の受賞作の制作過程や、この賞の魅力について語っていただきたいと思います。

今日はPremiers Prixを同点受賞された柳沢耕吉さんとアレクサンドル・オムランさんです。

 

なお、昨年末に開催されたPrix Presque Rien2017における受賞作品(全10作品)は、現在この記事から試聴していただけます。

 

 

Prix Presque Rien 2017 

 

 

Premiers Prix (ex-aequo)

・ < In The Dreams Some Drops Had >   (10’10 Kokichi Yanagisawa (柳沢 耕吉)

 

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・まず最初に作品制作の動機を教えてください。

 

ーLuc Ferrari氏のアーカイブ音源の音の捉え方や録音の狙いが、これまでに自分が趣味で録り溜めてきたものと似ている気がして、そういった性格の音源を用いた作品作りに可能性と面白さを感じたからです。

 

・なるほど、アーカイブの音源を選んだ理由について伺えますか?

 

ーこれは作品の内容に触れるので極力曖昧に言いますが、これだ、と思ったからです。

 

・プレスク・リヤン賞の魅力について、感じた点を教えていただけますか?

 

 

ー芸術(音楽)作品のコンペティションと聞くと、与えられた課題や形式に創作が不自然に制限される恐れがあるというイメージを漠然と持っていました。

この賞ではそういったものが(自分でそれを設けない限りは)一切ないために、アーカイブの音源から創作のアイディアが浮かんだ時、その行き先は自分自身が最大限に決めることになります。そうして制作はわくわくすると同時に緊張感のあるものになりました。コンペティションでありながら純粋に作る楽しみを持つことのできたこの賞は貴重であると感じます。

 

 

・ もしウェブサイトをお持ちでしたら教えてください。

Kokichi Yanagisawa | Free Listening on SoundCloud

https://soundcloud.com/kokichi-yanagisawa

 

vimeo.com

 

 

 

Premiers Prix (ex-aequo)

・  < L’otium du peuple > (12’54)Alexandre Homerin(アレクサンドル・オムラン)

 

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・ あなたの音楽における個人的な関心事を教えてください。

ーそうですね・・・私は音楽に備わる、ある種の多様性に惹かれます。最初から最後まで同じように響くCDやコンサートは退屈だなぁと感じます。

私が心惹かれるものは、意外性(思いがけないもの)です。作曲をする時でも、まず自分自身が驚くようなことをしようと試みます。なぜなら、まずは自分が驚かない限り、聴衆を驚かせることは出来ないと考えているからです。同様に、“アクシデント”にも興味があります。例えば、絶え間なく動いている機械が止まったり、あらかじめ設定されているシステムがリセットされてしまったり・・・つまり、バグが生じるような事柄です。

「もしその音が邪魔であれば、耳を傾けよ」という言葉をご存じでしょうか。この言葉のように、ある音を録音するとより一層詳しく分析することが出来ますし、さらにはその音を加工したり、アレンジしたりすることが出来ます。

でも私は、皆が特定出来るような、リアリティある音を求めているのです。あとで音を加工する時に動揺や不信の種を蒔くことが出来ますし、時にはぞっとするようなこの現実社会から離れたり、想像の世界に飛び込んだり、古ぼけた感じにすることも出来ます。作品の中では、絵画や彫刻のように(音を)削ることも出来るし、取り去ることも出来るのです。

録音に関しては、ある瞬間を捉えるためにポラロイドを使うカメラマンと少し似ているのですが、私はさまざまな瞬間を捉えるためにボイスレコーダーを持ってしょっちゅう出かけます。しかし、(録音を始める前に)魔法のような瞬間がすでに終わってしまっている・・・というようなことがしばしばあります。そのような時は、記憶をもう一度作り出すかのように、失われた瞬間の本質的なものを取り戻そうとモンタージュを試みます。

 

・ あなたのウェブサイトを教えてください。

Des clous | Free Listening on SoundCloud

 https://soundcloud.com/des_clous

 

リュック・フェラーリの音楽について、どういったところに惹かれますか?

私が最初に聴いたリュックのCDは、《異型接合体》《春景色のための直観的小交響》が入っている《アクースマトリックス3》でした。それまで電子音響音楽のことは全然知らなかったし、ミュージック・コンクレートさえも知らなかったのですが、(リュック・フェラーリの音楽を聴いた時)これまでにない新しい発見がいくつもありました。彼の作品からは現代のモダンな音楽という印象を受けたのですが、自然音(器楽音楽の多くに欠けていたもの)が組み込まれており、明白で分かりやすいユーモアと軽快さがありました。おおざっぱに言うと「真面目な」音楽なのですが、同時に滑稽な音楽でもあったのです。

 このユーモア(悲劇に対する武器)、彼の高いミキシング技術、カヴァーされたこれほど多様な領域、合成音楽の中には、こういった本質的側面に欠けるものがしばしば見受けられます。私は特に、リュック・フェラーリの自由に対する精神に驚嘆しており、常にそこからインスピレーションを得ています。

 

 

vimeo.com

 

 

・ personal concerns in music:

J'aime une certaine "variété" en musique je crois. Les disques ou les concerts qui sonnent pareils du début à la fin m'ennuient. Ce que j'aime, c'est d'être surpris. De même dans la composition, je cherche d'abord à me surprendre moi-même. Je ne peux espérer surprendre l'auditeur si je ne peux me surprendre moi d'abord. C'est ce qui m'intéresse aussi avec l' « accident »: ce qui interrompt une mécanique en marche, ce qui oblige à remettre en cause tout système préétabli, le fait d'utiliser ses erreurs.

Vous savez qui, disait « si un son te dérange, écoute le ». De même, en l'enregistrant, je peux encore mieux l'analyser, voire le transformer et l'amener à ce qu'il m' « arrange ».

Mais j'ai besoin des sons réalistes, que l'on puisse reconnaître. Après, les sons transformés permettent de semer le trouble, le doute, de quitter ce réel parfois terrifiant, de partir dans l'imaginaire, donner une autre patine. En composition, comme en peinture, ou en sculpture, on peut aussi gratter, retirer.

À propos d'enregistrements, je me ballade souvent avec mon micro-enregistreur pour capter des instants, un peu comme un photographe sortirait son polaroïd pour fixer un moment, mais souvent l'instant magique est déjà parti. J'essaie au montage de rendre l'essence de cet instant perdu, à défaut de pouvoir le rattraper, comme une reformulation du souvenir.

 

・ About Luc Ferrari, which are his characteristics that you are most interested in?

Le premier disque de Luc que j'ai écouté s'appelait « Acousmatrix 3 », avec « Hétérozygote », « Petite symphonie pour un paysage de printemps »... Je n'avais jamais entendu parler de musique électroacoustique, peut-être même pas de musique concrète, mais j'ai découvert quelque chose de totalement nouveau pour moi. L'impression d'écouter une musique contemporaine, moderne qui intégrait les sons de la nature (ce qui me manquait dans beaucoup de musiques instrumentales) mais avec de l'humour et une fluidité qui me rendait l'écoute évidente et accessible, en gros de la musique « sérieuse » mais drôle en même temps.

Cet humour (l'arme des tragiques), son art du mixage, les territoires tellement vastes qu'il a empruntés, ce côté organique souvent absent des musiques de synthèse et surtout cet esprit de liberté m'épatent et m'inspirent encore aujourd'hui.

 

 

 

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