全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。本日はプレスク・リヤン賞2013入選者の委細昌嗣さんのご登場です。
来る11月13日に、ドイツ人サウンドアーティストでプレスク・リヤン賞2015次席入賞者のヨハン(ヨハネス)・S・ジスターマン氏とのツーマンライブを敢行する委細さん。今回のインタビューはこのライブを記念した企画です。
本格的に音楽を始めたのは大学を卒業してからという大器晩成型の委細さん。紆余曲折を経てジャズミュージシャン菊地成孔氏の私塾生となり、作品が氏のラジオ「粋な夜電波」で紹介されたのも記憶に新しいところ。
(委細さんの作品はプレスク・リヤン賞のCDにも収録されています。ぜひ聴いてみてください)
フェラーリとの出会いはなんとタワレコの試聴機という、CD世代ど真ん中の委細さんはとにかく明るい!そのポジティブオーラは海を越えてフランスでも受け、いま活躍の場が広がっています。
甘いもの好きな委細さんとスイーツをいただきながらのインタビュー、早速どうぞ!
ー ジスターマン氏とのライブ ー
ーーーーまずはジスターマン氏とのライブが11月の13日火曜日に迫っています。場所は新宿・大久保の「ひかりのうま」ということですが、ここは今年の夏にもライブをされていたところですね。
「はい、映像作家のジャン=マルク・フォラックスさんとセッションした場所です。 30人くらいのキャパなんですけど、雰囲気が良くて、終わったあとにバー営業もするので、当日は皆さんにジスターマン氏を紹介する機会・交流する機会にできれば良いですね」
ーーーージスターマン氏といえば電子音楽のみならずインスタレーション、シアターミュージック、パフォーマンス、器楽、メディア芸術等々、幅広い活動を展開するアーティスト。当ブログ読者の中にはプレスク・リヤン賞2015で次席に輝いた、“Passage_vertical_Paysage”の作曲者としてご存知の方も多いかもしれません。ヘールシュピール(ラジオドラマ)の仕事を全面に推しているのが個人的に魅かれるところです。フェラーリも受賞したカール・シュツカ賞や、ケルンの西ドイツ放送よりドイツサウンドアート賞も獲得されていますね。
「ええ、プレスク・リヤン賞のCDにも一緒に収録されています」
ーーーーおお、先月DOMMUNEでも紹介されたやつ!菊地成孔さん効果で当ブログも軽くバズったと聞いております(笑)菊地さんについては後で詳しく伺うとして、このCD、2011年から2015年までのプレスク・リヤン賞に選ばれた面々の中から全20曲を収めたコンピレーションとなっていますね。 プレスク・リヤン賞は『フェラーリのサウンド・アーカイブから音を使う』という制約だけであとは自由、というユニークなコンペですが、同じフェラーリの音でもここまで違うかというくらいバラエティに富んでいます。ジスターマン氏と委細さんの作風もだいぶ違うので、どんな競演になるのか楽しみです。
「僕も演者ながら楽しみです(笑)。実は今回、ジスターマン氏よりこのライブに寄せたコメントが届きました! 早速ご紹介します」
今回私は「Eigen(Own)」という電子音響音楽作品(ケルンWDRラジオの音響芸術スタジオで制作した2015年の作品)をプレイし、また声と息そして特定の空間のルームトーンを使ったライブをする予定です。
同時に、デジタル化した映像をBluetoothやタブレット、エキサイター(エフェクターの一種)を介した通信音とともに会場の壁に投影します。
日本のお客さんの大好きなところは、無条件で聞いて、深く触れることができる彼らの能力です。
お客さんとの反応が共鳴すること、それが大切だと思っています。
「というわけで、ジスターマン氏とともに会場でお待ちしています。
ぜひぜひ遊びにきてください!
日時:11/13(火)open18:30/start19:00
料金 : 2,000円+1 drink
場所:東京都新宿区百人町1-23-17-B1『ひかりのうま』 」
ー コラボが好き ー
ーーーー当日は話題のプレスク・リヤン賞CDも販売するとのこと、要チェックですね! ところで委細さんご自身は普段どんなライブをやられるんですか?
「エフェクターやルーパーを使ってギターを弾いたり、音源を用意してソフトシンセの音を出したり、ですね。 でも実は僕、演奏よりも曲を作るほうが性にあっていて、楽器は苦手って自覚があるんです」
ーーーーええっ、そうなんですか?でも普段からライブたくさんやられていますよね?
「そうなんですけど、ライブ=レコーディングって感覚なんですよね。公開レコーディングみたいな感じ。完全にスタジオ作業ではない状態で音を作っていって、それを最終的に音源化するのが好きですね。ライブをやった結果が作品になる。だから、音楽家以外のクリエイターとコラボするのも好きなんです。違うメディアの人とやると形になりやすいんで。画家のコバヤシ麻衣子さんとのコラボや、舞踏家の山田有浩さんとのコラボとか、音以外のアーティストとの交流は活発に行っています」
ーーーー私、youtubeにアップされているオランウータンの曲が好きなんですよ。ペインターとのコラボだったと思いますが、とてもキュートな音使いで絵のテイストとマッチしていると思いました。
「ありがとうございます。友人のペインターのSakiさんとコラボしたやつですね。音の素材は過去のものだったんですけど、ちょっと変えたら使えるかなっていうのがあったんで、ポストカードにしたらいいかなとかイメージを膨らませていくうちに曲になりました。ポストカードにしたらQRコードをつけておいて、曲にすぐ飛べるようにとか計画しています。そうやって手元に残る形にすることが好きですね」
ーーーー以前ひかりのうまで共演したジャンさんも、ペインターであり映像作家でもあるんですよね。
「はい。音も絵もやる、マルチな人ですね。ジャンさんは僕が音源をリリースしているフランスのTSUKU BOSHIレーベル のメンバーです。2016年にパリでお会いして、彼のライブペイントのギグに行ったりして仲良くなりました。 彼が主宰しているイベントが面白くて、『Les Soirées Dessinées (デッサンの夕べ)』って言うんですけど、頭文字を取ると「LSD」(笑)。 美術館の中でデッサンをするイベントで、ギメ美術館やルクセンブルク美術館では僕の曲も上演されました」
ーーーー今後もジャンさんとのコラボは続きそうですね。
「そうですね。実はもう決まっていて、来年の4月にリヨンで一緒に展示をします。日本の祭をテーマにしたいと彼は言っていて、来日のときに埼玉のうちわ祭りに行って写真を撮ったりしていましたね。展示期間は2ヶ月ですが、僕はそのうち1ヶ月ほど滞在する予定です」
ーーーー楽しみですね!
ー 音楽をはじめたのは... ー
ーーーーところで、楽器が苦手っておっしゃいましたけど、小さい頃から音楽をやられていたわけではないのですね。
「小さい頃は音楽嫌いだったんですよ。音楽の授業が本当に嫌いで、歌のテストやリコーダーとかすごくイヤでした。家庭環境もごく普通。父親がフォーク世代でギターをかじっていたらしいんですが、僕が物心ついた頃には辞めてましたね。僕は5人兄弟の真ん中で、しかも全員男っていう家族構成。ギターどころじゃなかったんでしょう(笑) 」
「中学でディープ・パープルとかのロックを聴いて『こんな自由なんだ』と思って、それから徐々に音楽に心を開いていきました。 15,6歳の時に初めて人のライブを観て、それがベン・フォールズ・ファイブだったんですけど、僕、出身が山口の下関で、中心地に出るには小倉か博多に出るしかなかったんですね。ベン・フォールズは博多に来てくれたんだけど、行ったはいいけどアンコールもそこそこに新幹線で帰ってこないといけない。そんな環境だったので、早く東京に出たいな〜と思っていました」
ーーーーそれで大学進学を機に上京、と。
「それなんですけど、前期試験ぜんぶ落ちちゃって、でも浪人する気力はなかったので後期試験のあるところを狙ったら法学部に合格したんです。でも入ってみたら法学部だけ校舎が小田原にあって(笑)東京や横浜に出るつもりだったのに、関東ぎりぎりのところになっちゃいました(笑)
その頃は渋谷系とかにはまっていましたね。コーネリアスやボアダムス、中原昌也さんとかも聴きました。MTR(マルチトラックレコーダー)を買っていじったり」
ーーーーその頃から演奏よりも音を組み立てることに興味があったのですね。
「そうですね、大学でもギターは弾いていたけど、適当でした。ちゃんとやりだしたのは社会人になってから。ギタースクールに通うようになってからです。2003年くらいから10年足らず、菊地晃先生に習っていました。菊地晃先生がジャズギター専門だったので、徐々にジャズにも傾倒していった、という感じです」
ーーーージャズはどんなものを聴いていましたか?
「ジャズはギタースクールに通い始めてから聴くようになったんですけど、スタンダードはよくわからなかったんですよね。でもフリージャズというのがあるというのを知って、生楽器でこういう音を出すんだ!っていう驚きから、エリック・ドルフィーとか、あとフリージャズじゃないけどミンガスとかをきいたりして、そこから段々と」
「でも一番はまったのはマイルス・デイビスでしたね。マイルスにというより、(プロデューサーの)テオ・マセロにはまってたのかな。ジャズって即興を聴くってイメージですけど、僕はいわゆる名演っていうのにはそこまで惹かれず、こっちのアンサンブルのほうがいいだとか、起承転結のあるスタジオ・ワークなどに興味を持ちました。70年代のマイルスにはまってたもので、関連書籍や雑誌−レコードコレクターズとか−を漁ったり、マイルスとジミヘンの関係からジミヘンを聴いてみたり…菊地成孔先生を知ったのもマイルスがきっかけなんですよね」
ー フェラーリとの出会い ー
ーーーーリュック・フェラーリを知ったのはその頃だったとか…?
「当時はタワレコによくいっていて、JazzのCDをよくチェックしていたんですけど、高かったんですよね。2014年くらいからタワレコもジャズの名盤を1000円で復刻しだすんですけど、2011年当時だとまだそういうのは無くて。いっぽう、クラシックのコーナーには1000円のCDがあって、オーケストラルスペースっていう60年代の武満徹とかの音源をセレクションしたやつとか、手に入りやすかったので買うようになっていました。
平行して、深夜のバイトをしていた影響で昼夜逆転の生活だったんで、よく深夜ラジオを聞いていたんですね。TBSでやっていたOTTAVAとか」
ーーーー現在はネットラジオで人気のクラシック番組ですね。
「そうです。それでジョン・ケージとかスティーヴ・ライヒとかを聴いて、面白いなと思ってたんで、クラシック・現代音楽も気になってきてたんです。 ある日、試聴機をチェックしていたら、コレに出会ったんですよね」
Madame De Shanghai / Visage 2 / Apres Presque Rien
- アーティスト: Luc Ferrari
- 出版社/メーカー: MODE RECORDS
- 発売日: 2011/01/25
- メディア: CD
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「『上海夫人 Madame De Shanghai』にやられました。 足音が目の前で聞こえて、フルートが鳴ってて…これはヤバいなと。 『ミュジック・コンクレート』って、話には聞いていたけど、ただ町の音を録音してつないで…というものだと勝手に思っていたんです。そうしたら思いのほか立体的なんでびっくり。それで他の作品も聴いてみようと思うようになりました」
ーーーー相当はまったんですね。
「ジャケットもかっこいいですよね。このジャケ、後から知ったんですけど、ブリュンヒルド(・フェラーリ夫人)さんのコラージュ作品らしいです。2016年に(ブリュンヒルドさんの)ご自宅に伺った時、原物を見せてもらって感激でした」
ーーーー「ミュジック・コンクレート」ってワードは菊地成孔さんから教わったのですか?
「いえ、成孔先生に習うのはもうちょっと後の話です。転職するタイミングでギタースクールを辞めて、少ししてまた再開したいなと思って門を叩いたら、残念なことに菊地晃先生はお亡くなりになっていたんです。それでどうしようかなと思っていたところ、成孔先生の私塾『ペン大(ペンギン音楽大学)』が生徒募集をしていたので、 入りました」
ーーーーペン大ってどんなところなんですか?
「主に音楽理論を学ぶクラスです。新宿御苑にある8畳くらいの古いスタジオで、1回2時間、2週に一度のクラスが開かれています。生徒間でしたら録音もOKで、ノートを貸しあったりしていますね。生徒は社会人が中心。趣味で音楽をやっている人から、ピアノも見たことがない・五線譜も知らないという超初心者までいろいろで、職業も多種多様です」
ーーーーお勤めをしながらクラスに通うとは、皆さん熱心なんですね。
「最初は大勢いるんですが、段々と脱落者が出てきて(笑)、1年後には半分くらいに。成孔先生は美学校っていうところでも教えてられるんですが、今はペン大の上のクラスと美学校の上のクラスが合流したクラス編成で、ちょうどポリリズムの授業を受けているところです」
ーーーーいまだ現役の受講生なのですね!その向学心に脱帽です。 ポリリズム、どうですか。面白いですか。
「面白いですね。同じ曲でも、3拍子でキープして聴くのと4拍子で聴くのとでは聴こえ方がガラっと変わってしまうっていうのが面白い。
音に限らず、同じものをみても感じ取り方や印象って違うじゃないですか。人間関係とかはそれがトラブルのもとになることもあるけど」
「リュック(・フェラーリ)さんの言葉で心に残っているのがあって、『人が“これが正しい”って思った時点で、間違っている』みたいなことを言っていて、確かになあと。僕はけっこう一点集中で前のめりになりがちなんで、戒めになる言葉です(笑)。いろんな聴き方ができるっていうギミックを音で表現できたらと思います」
ー 菊地成孔先生からの影響 ー
ーーーー委細さんの曲っていろんな面がありますよね。繊細な曲もあればドローン的な曲もあればぴょんぴょんはねる曲もあれば……。本や絵や写真などからのインスピレーションも広大無辺です。そういった幅のある点は菊地成孔さんからの影響がかなり大きいんじゃないでしょうか
「大きいですね。先生のバンド『ペペ・トルメント・アスカラール』でやっているようなクラスター音には影響を受けました。それから先生のアルバム『Degustation a Jazz』では、CDを皿に見立てて、盤という意味でも音楽のフルコースという意味でも成立させていますが、僕のファーストアルバムではCDの頭出しできる機能にフォーカスしてメディアの特性を生かしています。そういう作品としての見せ方を考えるという発想も学んだ気がします。
- アーティスト: 菊地成孔,カヒミ・カリィ,ハン・トンヒョン,UA,大森百恵
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ーーーー菊地さんは言わずもがなプレイヤーでもありますが、同時に知識のストックが膨大です。音楽理論や体系を広く網羅し、自身の中で分類して、まるで引き出しを開けるように取り出していらっしゃる。ラジオや著書でもそれを発揮しておられますが、作曲やDJにも同じく表れているように思います。ただそれが決して学者さん的ではなく、肌感覚から出しているようなグルーヴィさがありますよね。委細さんの作品にも共通項を感じるところです。
「嬉しいです。様々なタイプの音楽・文学や映画への関心を作品に落とし込むスタイルは、成孔先生から学んだ影響が多いですね。僕、映画も好きで、といってもシネフィルってわけじゃないんですけど、以前は下高井戸シネマっていう名画座に毎週通っていた時期もありました。映画って擬似旅行的だし、僕クラブとかは好きじゃないんですが、大音量を浴びたい!ってときがあって、そんなとき映画館はうってつけなんですよね(笑)」
ーーーーあと、菊地さんて出自にすごくこだわりがあって、ラジオでも千葉の銚子出身で、飲み屋の息子でワイルドな環境で育って…という幼少期のお話をよくされますよね。ブルジョワ出身ではないんだというところを矜持にしておられる気すらします。知識人然とはしないぞ、という、ストリートなアイデンティティが根っこにあるのかなと捉えていますが、そのあたりはどうですか?ご自身と比較して。
「あまりそのへんは考えたことがないかな。夏に地元に帰ったんですけど、『ここ地元だったんだ…』っていう他人事みたいな感覚を持ってしまって…こっちでの人生のほうが長くなっていますので。
でもストリートでやっているっていうのは確かにあるかも。あまりアカデミーの方々と絡む機会ってないし」
ー アカデミーとストリート ー
「去年、プレスク・リヤン賞のCDに収録されているアーティストを集めたイベントをやって、梅沢さんとか佐藤さんとか李さんとか、東京芸大出身の方々と一緒にやらせてもらったんですけど、そういう意味ではめちゃくちゃ良い機会になりましたよね。ライブをやったから会えた人たちです」
ーーーー桜台プールで開催された「つながりは、ほとんど何もない ~Prix Presque Rien CD release party」ですね。梅沢さんたちの音はどう思いましたか?
「とにかく音がきれい。ライブを行うにあたって、事前にミーティングをして音を持ってきてもらったんですけど、皆さん音がパキッとしていて、隅々まで『見えている』感じがしました。習字で例えると『はねるところははねる、止めるところは止める』という感じ。僕は字が雑なので、かっこいいって思っちゃった。いわゆる小節があって、メロディーがあって音階がある、という『曲』然とはしていない抽象的な表現なのに、すごく聴かせるんですよね」
ーーーーこの日私は伺えなかったのですが、写真を拝見すると、素敵な夜だったのが伝わります。
「これ、撮ってくれたのが田島浩一郎さんというお客さんなんですけど、ペン大の同級生なんです。田島さん、今リュックさんにハマっているんですよ(笑)」
ーーーーわあ、それは嬉しいですね。
「リュックさんを軸に、いろんな背景を持つ人が交われれば良いですよね。垣根があるわけではないけど、たしかにアカデミズムとストリートの間に断層はあると思うんですよ。でもそれって単に接する機会がないだけだと思う」
「バンドってライブのイメージが湧くじゃないですか。でも電子音のライブってイメージが湧かないんじゃないかな。だから来てもらった人にはCDを配るとか、なにか特典を設けるなど工夫して、少しでもお客さんに喜んでもらいたいなって思っています」
ーーーーそのサービス精神と明るさは貴重です!アカデミズムの人って暗い人が多いので(←ほぼ自戒です笑)、委細さんのような人がぜひパイオニアになって欲しいですね。ところで、お聞きしていると、CDなどの「モノ」にこだわりがあるのですね
「CD世代ですからね。毎週のジャズスクールで先生に借りたり、先生から名前を聞いたアルバムをネットで調べてメモったり、あとはTSUTAYAのレンタル!めっちゃお世話になりました。ネットっておすすめは出てくるけど、偶然の出会いってなかなかないですよね。その点お店や先生からの情報って自分にとって結構なカウンターパンチで。あとCDにはジャケットのコピー力っていうか、モノを触って感じる何かがある。だから、大切にしたいんです」
ー リュック・フェラーリのベスト3 ー
ーーーーでは、そうやって出会ったリュック・フェラーリの、委細さん的ベスト3曲を教えてください!
「まずは何をおいても『上海夫人 Madame De Shanghai』。そして『引き裂かれた交響曲』。あとはそうだな...あれですね、『細胞75』。ピアノとパーカッションがかっこいいですよね」
ーーーーなるほど、器楽と電子音のミックス作品がお好きなんですね。
「生楽器の音を信じてるところはあります。コンピュータで電子音を使っていても、あまりテクノロジーそのものへの興味というか、物理現象としての音を新しいシステムでやるって方向にはそれほど関心がないんですよね」
ーーーーちなみにDAW(デジタルオーディオワークステーション/音を編集するコンピュータソフトのこと)は何を使ってますか?
「僕はREASONですね」
ーーーー珍しいですね。周りではあまり聞かないかも。
「僕みたいにMTRから始めた人にはやりやすい気がします。そういえばスティーヴ・ライヒもREASON使ってるらしいですよ。コンポージアムで来日した時に講演会へ行ったのですが、たしかそうおっしゃっていました」
ー 今後の展望 ー
ーーーーそろそろお別れの時間となってきました。今後の予定を教えてください。
「まずは11月13日のライブへ来てください。あとは去年作った曲を修正してどこかで出したいのと、それから4月のリヨンでのジャンさんとの展示ですね。さらに、YouTuberになる(笑)」
ーーーーえ、どういうことですか?
「YouTubeの自分のチャンネルで、軽い音ネタを新聞のようにアップする計画をしています。日常の音だけを集めた、日記のような感じにしたいな。よかったらチャンネル登録お願いします!(笑)」
ーーーー楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました!
(インタビュー / 文:渡辺 愛 (作曲家)、インタビュー日時:2018年10月8日 於:東京・高田馬場)
編集後記:11月13日のライブに際し、ブリュンヒルド・フェラーリ夫人よりコメントが届きましたのでご紹介します。
フェラーリが残した“sonic treasure”にまったく違うアプローチを試みたジスターマン氏と委細さんのツーマンライブ、素敵な夜になること請け合いですね。みなさまお誘い合わせのうえ、ぜひお出かけください。