もちろん、それはドラマでなくてもよかったのだ。「きんどん」というものが流行っていたのも、この頃のことだ。ラジオでの投稿コントであり、ネタ自体も面白かったが、そこにさまざまにからむ音響がとても刺激的だった。そして、高音質のFM放送も最盛期であり、音楽ファンは「エアチェック」というものを、FM雑誌を片手に、非常に勤勉に行っていたものだ。そこには、音楽もあったが、語りもあり、朗読もあり、ドラマもあったのだ。私の記憶に残っているのは、(「きんどん」だったのか、他の番組だったか、定かではないが)女性の喘ぎ声であり、FM番組の民俗音楽特集で聴こえて来た、アフリカの幼女の歌い声である。どちらも、まさしく、リュック・フェラーリの音楽に聴こえてくるような、個人性・内面性、そして何よりも官能性をもたらしてくれたのである。それは、中学生の「うぶな」男の子には十分に刺激的だった。(続く)(椎名亮輔)