リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

【ありがとうございました! Thank you for RT】「船上のピアニスト」とは誰だったのか?【御礼とご報告】

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

さかのぼること1月ほど前の10月25日、支局ツイッターに掲載した1枚の写真がかってない反応を起こしました。

 

f:id:presquerien:20181127210240j:plain

この写真に関して、日本語での投稿であったにも関わらず、1000を超えるリツイートやいいねをいただきました。リツイートならびに「いいね」をいただいた皆様、また調査にご協力いただいた皆様に、この場を借りまして御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

今日はこれまでに判明した部分につきまして、経過も含め、ご報告をさせていただこうと思います。

 

そもそもの始まりは、パリのプレスク・リヤン協会本部からの1通のメールでした。

そのメールによれば「現在、リュック・フェラーリの<ほとんど何もない第一、あるいは海岸の夜明け>(Presque rien (Nº 1) ou Le lever du jour au bord la mer )が録音された、ヴェラ・ルカ(現クロアチア(旧ユーゴスラビア)の都市)で1968年から72年にかけて開催された国際芸術祭(International Artists’ Meetings in Vela Luka)を研究している芸術家・研究者のダルコ・フリッツ(Darko Fritz)氏のグループが調査のために来仏しているが、この写真に心当たりのある日本人はいないだろうか、と尋ねている。当時このイベントにはリュックもいたし、また日本人の画家も参加していた

。ダルコさんやこちらでも調査はしているけれど、そちらでももし何か手がかりになりそうなことがあれば教えて欲しい」ということでした。

 

そこで支局でも調査を行いつつ、ツイッターに写真を投稿しました。

http://www.academia.edu/37654792/1968_1972_International_Artists_Meetings_in_Vela_Luka

 

日本ではツイッター方面に特に大きな反応があり、「東欧サッカークロニクル」の著者である長束恭行さんからもメンションをいただきましたが、それだけの大きな反響にも関わらず、この写真に直接結びつく手がかりはありませんでした。

ただ予想以上の反応をいただいたので、後日クロアチア語と英語でもツイートをしたところ、Brian Wells Stevens さんから「彼の名はVangelos Papatanassiouである」という答えをいただきました。

ヴァンジェロス・パパタナスィウ(パパタナス)と言われてもピンとこない人でも、「ヴァンゲリス 」と言われたらピンとくるかもしれません。「ヴァンゲリス」と言われてピンとこない人でも、「炎のランナー」のテーマソングならば、きっとどこかで一度は耳にしたことがあるでしょう。

 

とりあえず早速この情報を本部に送ったところ、ヨーロッパ各地で調査の後、ちょうどクロアチアに帰国したばかりのダルコさんご本人からも追って連絡がありました。

ーーー(以前からヴァカンスでヴェラ・ルカをよく訪れていたリュック・フェラーリがその地で「ほとんど何もない第一」の素材となる録音の収集を行ったのは1967年、その翌年である)1968年にこの国際芸術祭に招かれたフェラーリは「夜にボートから岸にいるグループに光でサインを送り、それで音楽をつくるというパフォーマンスを行った」という話を思い出した方がいたそうです(別情報では複数の色付きの光源を使用したとも)。「ただ夜間であったため、そのパフォーマンスに関しては写真などの記録が残っていない」ということで、その人によれば、「このボートこそがそのパフォーマンスが予定されていたボートで、ピアノを搭載する作業に非常に手間取ったこと、またその設置の後に何人かがそこで演奏を試した」ということだそうです。

この写真の人物がなぜ他の記録に残っていないかということについて、現時点までの調査によれば、「この日ヴェラ・ルカから50キロほど離れたコルキュラ(Korčula)で行われていたサマースクールからの訪問客があり、この人物はひょっとして国際芸術祭ではなく、その中にいたのではないか?」ーーー

ダルコさんはこのような仮説をたてておられました。

 

【11月28日追記】

ダルコさんが12月1日にブダペスト応用美術大学(Moholy-Nagy University of Art and Design Budapest)でのCentral European Society for Soundscape Ecology で、FOUND OF THE ISLAND – LUC FERRARI AND OTHER SOUND TRANSMITTERSという講演をされるようです。

 

 

Darko Fritz HR – Central European Society for Soundscape Ecology

cesse.mome.hu

 

さて、はたしてこの船上の人物が「ヴァンゲリスであるかどうか」については「そうであるという人もいるし、おそらくそうである可能性は相当高そうだけれど、現時点では確実な証拠を得ていないので、引き続き調査を続行します」とのことで、支局では今後ともダルコさんの調査の行方を見守ると同時に、有力な情報が入った時点でお伝えしたいと思います。

支局でも何かこの写真についての情報をご存知の方がいらっしゃいましたらご連絡をお待ちしています。

 

なお1968年にヴェラ・ルカの国際芸術祭に参加していた日本人の芸術家は田淵安一 (1921−2009)だということです。