全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。
「え?まだやってたの?」と言われかねない位のさすらいのコーナー「リュック・フェラーリの『ダンボール箱からひとつぼし』」です。およそ2年ぶりの登場です。
このコーナーは2013年にフランスで発見されたリュック・フェラーリの個人レコード・コレクション(「段ボール箱から救われたアーカイブス」”Les Archives Sauvées des Boîte en Carton Ondulé”)から完全無作為に抽出された1枚を紹介し、彼がどのような音楽を聴いていたかという観点から、彼の芸術の秘密について遠回しに考えつつ、美味しくお酒をレコードを聞いていただくための企画です。
さて、今日のアルバムは実は「段ボール箱から救われた」方ではない、ノーマルのレコードアーカイブスからのご紹介です。
ところでみなさま、先月のプレスク・リヤン協会日本支局ツイッターでちょっとしたツイートがあったのをご記憶でしょうか?
そうです、もちろん今日はそのツイート絡みのお話です。
1969年の10月24日から28日まで、ベルギーのアムージでは、Festival d'Amougiesという音楽イベントが開催されていました。
Festival d'Amougies — Wikipédia
このイベントは「ヨーロッパのウッドストック」とも呼ばれたコンサートで、書ききれないほどの多彩なバンドやアーティストが参加していました。
観客は5日間でのべ8万人にのぼったとも言われています。
イベント2日目となる10月25日の土曜日、リュック・フェラーリはこのコンサートに夫人(一説には友人一人が同行したとも)とともにパリから車を飛ばして向かいます。一番のお目当てはピンク・フロイドだったそうです。
さて、一行が到着して間もなくすると、会場でこんなアナウンスが流れ始めました。
「フランスからお越しのリュック・フェラーリ様、リュック・フェラーリ様、フランク・ザッパ様がお待ちです。おられましたらバックステージまでお越し下さい。」(放送内容はイメージです)
「おいおい、俺、名前呼ばれてるよ!」なんてことを彼が言ったかどうかは定かではありませんが、リュック・フェラーリがブリュンヒルド夫人とともにバックステージに向かうと、果たしてそこにはフランク・ザッパがリュック・フェラーリを抱きしめるために立っていたのでした。
幕間のわずかな時間だったので、二人(ブリュンヒルドさんを入れて3人)がどのような会話を交わしたのかも今となっては定かではありません(とてもよい雰囲気で二人は出会い、ちょっとした会話を交わして分かれた、ということのようです)が、ひょっとしたらこの世界のどこかに、3人が写っている写真が存在している可能性は大いにあります。
(もしそんな写真をご存知でしたら、ぜひご連絡ください!)
この日、リュック・フェラーリは40歳、1940年生まれのフランク・ザッパは29歳でした。
フェラーリが来ていることをザッパがどうやって知ったのか、おそらく関係者の誰かが告げたものとも思われますが、この話は当時の欧米での音楽界隈におけるリュック・フェラーリの認知度を示すエピソードの一つとなるでしょう。
この話には後日談があり、リュック・フェラーリは自身が招聘された2005年4月26日から5月4日にかけてベルファストで開催された”sonorities-FESTIVAL OF COMTEMPORARY MUSIC”のイベントで、Ars Novaの指揮者Philippe Nahonにザッパの曲を演奏してもらうように仕向けたそうです。
http://www.sonoritiesfestival.co.uk/old/2005/Sonorities%20Hi%20Res.pdf
ということで、今日はそんなリュック・フェラーリが持っていたザッパのコレクションから2枚と、ザッパの盟友でリュック・フェラーリも愛聴していたというキャプテン・ビーフハーツから1枚ご紹介しましょう。
Lumpy Gravy(SVLP 9223)。これは1968年発売で、独英同じカタログ番号ですが、Discogsの記事からですと裏ジャケットにカタログ番号があるところを見ると英国版かもしれません。
Hot Rats (RSLP 6356) 1970年発売のもの。フェラーリの個人所蔵を示す、エールフランスのタグ付きです。
Captain Beefheart & His Magic Bandからは
Trout Mask Replica(STS 1053)。
こちらもタグ付き。
余談は続きますが、リュック・フェラーリがキャプテン・ビーフハーツを知ったのはベルリン時代のことだそうです。
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ダンボールからひとつぼし カテゴリーの記事一覧 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)