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リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

プレスク・リヤン賞2015(Prix Presque Rien 2015)の講評が発表されました!

プレスク・リヤン賞 prix 2015 寄稿 椎名亮輔

 

全国二万五千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

2年に一度の国際コンクール『プレスク・リヤン賞』(Prix Presque Rien)に注目しておられる皆様、お待たせしました!

昨年末に開催された「プレスク・リヤン賞2015(Prix Presque Rien2015)」の審査員をつとめられました、椎名亮輔さん(同志社女子大学教授)による最終審査の講評が発表されました。

椎名さんは前回のプレスク・リヤン賞2013で日本からの審査員をつとめられて、2回連続での審査員となります。

 

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プレスク・リヤン賞2015は応募手続きと制度の変更などから、参加者総数自体は想定されていた通り、前回(プレスク・リヤン賞2013)より減じましたが、最終審査には前回同様バラエティに富んだ作品が残ったそうです。

なお日本からは今回参加手続きはしたものの、作品を応募されなかった棄権者が相当数いたということで、こういった点は今後の検討課題になります。

またプレスク・リヤン賞2015および作品についてはこちらをご覧ください。

 

 

association-presquerien.hatenablog.com

 

 

なお、今回の講評はいただいた原稿を分割せず、そのまま掲載しております。(人名表記の一部を変更しております)

 

 

 

プレスク・リヤン賞2015

最終審査講評

 

 第3回に当たる2015年のプレスク・リヤン賞には、全世界から32作品の応募があった。その中から選考され、最終審査にまで残ったのが20作品である。最終審査は、2015年11月19日にパリ市内アトリエ・ポスト=ビリッヒにて行われた。審査員は以下のとおり。

 

ドイツラジオ・ベルリンDeutschlandradio Berlinのマルクス・ガメルMarcus Gammel、

同志社女子大学(京都)の椎名亮輔、

作曲家のダヴィッド・ジスDavid Jisse(プレスク・リヤン協会会長)、

作曲家でモトゥスMotusのヴァンサン・ロブフVincent Laubeuf、

作曲家で“La Muse en Circuit”(「回路の詩神」協会)会長のヴィルフリード・ヴェンツレンWilfried Wendling、

そして作曲家のブリュンヒルドフェラーリBrunhild Ferrariである。

 

以上のうち最初の2名はインターネット中継により、ドイツおよび日本からの参加であった。

 

 

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(写真は左よりヴィルフリード・ヴェンツレン“La Muse en Circuit”(「回路の詩神」協会)会長、ヴァンサン・ロブフMOTUSディレクター、ダヴィッド・ジス(プレスク・リヤン協会会長)、ブリュンヒルドフェラーリに加え、Deutschlandradio Berlinよりマルクス・ガメル、同志社女子大学から椎名亮輔教授がインターネット通信により審査に参加した)

 

審査員全員はあらかじめ、最終選考に残った全作品を聴き、10点満点で点数をつけておいて、会議に参加した。会議の進行は、プレスク・リヤン協会会長のダヴィッド・ジスが行い、順番に選考作品作家の名前を告げて、その一人一人についてそれぞれの審査員が自分の評点を言い、かつ評価理由について口頭で述べるというものである。以下、それぞれの作品について述べていこう。

 まず、渡辺愛のLe Paysage immodéré、10分ほどの作品である。オルガン演奏とフランス語による言葉が多く用いられる。そこにフェラーリの音源がうまく絡められていく。しかし、個性があまり感じられないとして、評価が分かれた作品である(しかし、以後、ほとんどの場合評価が一致する作品というものは  マイナスの意味を除いて  なかったのだが)。

 ついでカトリーヌ・シュネデールCatherine SchneiderのPar une nuit, loin de la ville。7分30秒。ドローン上の即興といったおもむき。あまり意味のわからない雨音が聞こえ、倍音が強調された風の音が聞こえる。独創性に欠けるが、まずまずの評価。

 次にディミトリオス・マロニディスDimitrios MaronidisのTransient Beautyも7分30秒ほどの作品。電子音が続くのだが、切断がいくつもある。動きが断ち切られてしまう感がある。ソフトの使い方などが時代遅れ。

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忌憚ない意見交換により選考作品が絞り込まれていく。妥協は一切なし。

 

 

そして梅沢英樹のLe Néantは5分18秒の作品。ビッグ・バンで始まり、雨やたくさんの物事がコントラストよく経過する。移動や電子音が聞こえ、確かな技術に支えられ、要領よくまとまったもの。終結部がやや説得力に欠けるものの、各人が納得させられた作品。

 

 次はジェローム・ラゲートJérôme LagueyteのL’éveil de la machine4分33秒の作品(ケージへのめくばせ?)。「機械のめざめ」というタイトル通りの物語がなんとなく語られる。それによりいわゆる音楽らしさが生まれてくるが、評価が分かれ、好悪がはっきりと出た。

 ついでヨハネス・S・ジスターマンス Johannes SistermannsのPassage vertical Paysageで8分23秒。雑音、電子音、雑音、歌というようにばらばらな要素がうまく組み合わされる。アイデアが面白い。しかし断絶はどうなのか。

 そしてホルヘ・バックマンJorge Bachmannのeleferraはけっこう長く、12分21秒の作品。《プレスク・リヤン》第2番を下敷きに、漸進的な変化を導入していて、なかなかうまい作品だったが、終結部がよくなく、評価が分かれた。

 次のジョゼ=アンドレ・ドイッチュJosé-André DeutschのA voir le sonもやや長く、10分17秒。あまりに多くの要素が詰め込まれ、さらにパルス音が重々しい。しかしまた個性的で可能性があるとして、評価が分かれるところ。

 

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白熱した審査会を終え、計算をWチェック中のヴェンツレン氏と、細目を記載中の審査員諸氏。

 

 

 第1ファイルの最後の作品が、マルティン・ダスクMartin Daskeのthinking of something I don’t knowで、6分48秒。うまく逸話的音響を用い、そこに詩の朗読がからむ面白いアイデア。しかし、技術がぎこちなく、あまりに無意味な音がありすぎると感じられる。

 第2ファイルの筆頭は、林恭平のRessurectionでこれもけっこう長く、13分ほど。4楽章の交響曲形式をとっており、やや古典的なミュジック・コンクレート的作品。しかし、しっかりした技術、てぎわのよい構成感が評価される。

 次はラスロ・ウンブライトLaszlo UmbreitのMagnolia、5分。カオス的な音響の中に、リュックの声が聞こえてくる。しかし表面的とする意見もあり、評価が分かれた。

 そしてローランス・ブーカルトLaurence BouckaertのMémoire de femmes, paysage, passageで11分35秒の作品。低音のドローンにフェラーリの音源、ビストロや水、子供など、反復もあり。ここには女性性の連続がきちんと意図として見えており、評価された。

 ついでリサンドロ・バルバトLisandro BarbatoのTo bee or not to beeで9分49秒。タイトルからしてダジャレなのだが、パルス性やダイナミック性など、ある種の物語性が感じられる点で、高評価だった。しかし、やや紋切り型だとして、また評価が分かれた。

 次はマンフレディ・クレメンテManfredi ClementeのLa boucle、11分10秒。爆発があり、ホルンのような音が聞こえたかと思うと、息遣いがあり、6分くらいからがらりと変化する。技術や構成感が巧みで評価される。しかしまさにその高評価要素が、マイナスに作用し、評価が分かれた。

 ついでマヌエラ・ブラックバーンManuela BlackburnのPresque mon son、8分16秒。いろいろな要素を詰め込みすぎのうえに、メタリックなリズムボックスがどうなのか。しかし、音色や効果、雰囲気を好む審査員もおり、好悪がはっきりと分かれた作品。

 次はマルセロ・カルネロMarcelo CarneiroのVH104で8分46秒。ブラジルからの応募であり、ある種の暴力性が支配する。パワーが認められるが、その評価はプラスマイナスが分かれた。

 そして南アフリカからミレナ・キプミューラーMilena KipfmüllerのThen and now、もっとも長く18分37秒。作者の全世界をめぐる遍歴が語られる。その点は「音楽散歩」のフェラーリ的でもあるが、その意味をどう伝えるか。構成が冗長で想像力がないとも言われ、評価が分かれた。

 日本からトモコ・スズキ(漢字表記がわからないのでカタカナで失礼する)のReel-to-Realは5分ほどの作品だが、今回の応募作の中で唯一映像を含む作品である。子供の描いた絵を用いてそれをアニメにして、そこに音響をかぶせている。アイデアは面白く、映像はかわいらしいのだが、音響の完成度におおいに欠ける点があり、評価は残念ながら低かった。

 そして中国江西省からYing ZiLiのSearchingは5分40秒の作品。あまりにあからさまな東洋趣味が審査員を鼻白ませたのは確かである。そこで評価が高まらなかった。

 最後は別便で送られてきた、オリヴィエ・ファルコンOlivier FalconのErlkönigで10分ほど。タイトルはシューベルトの《魔王》から来ているのだが、フェラーリの音源の上に、無関係にゲーテの詩が朗読される。単純であまり芸のない作品と評価されてしまった(《魔王》はやはりシューベルトの方がいいなあ)。しかし、これもその「芸のなさ」を積極的に評価する審査員もいた。

 

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アトリエ・ポストビリッヒでの審査終了の記念撮影。「プレスク・リヤン賞2015」公式ポスターの前での審査員諸氏。写真の4名に加え、インターネット回線で日独から2名の審査員が参加した。

 

以上の20作品について、各人の評点を合計して最も点数の高いものから、一人目が「プレスク・リヤン賞」、次の二人が「次席賞」ということになる。合計で43点を獲得した梅沢英樹が一位、ヨハネス・ジスターマンスとリサンドロ・バルバトが両者とも42点で二位となった。ちなみに、その下はローランス・ブーカルト、マンフレディ・クレメンテ、マヌエラ・ブラックバーン(以上41点)であった。

 

 

(終わり)

 

 

みなさま、いかがでしたか?

既にフランスではフランス・キュルチュールなどのラジオで注目されている

プレスク・リヤン賞ですが、日本では今一歩お届けできていないかな、お伝えできていないかな、という感じです。

もし「日本で聴いてみたい、聴く機会を作ってほしい」と思っていただけましたら、ぜひツイッターやLINE,Facebookなどで盛り上げていただけますとチャンスが作れるかもと思っています。

 

 

 

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