リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

プレスク・リヤン賞(Prix Presque Rien 2015)入賞者の紹介です!

【絶賛予約受付中】3月出版!リュック・フェラーリの作品を「日本語で読む」時代がやってきた!

association-presquerien.hatenablog.com

 

 

全国2万5千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

 

お待たせしました。

 

リュック・フェラーリのサウンド・アーカイブを使用した芸術作品により開催される国際コンクール、Prix Presque Rien(プレスク・リヤン賞)。

 

昨年開催された第三回となる「プレスク・リヤン賞2015」は日本から梅沢英樹さんの作品 « Le Néant  »が初挑戦にして見事プレスク・リヤン賞を獲得しました。

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本日は簡単ではありますが、プレスク・リヤン賞2015受賞の梅沢英樹さん、また次席作品に選ばれた« To bee or not to bee »の作曲家Lisandro Barbato(リサンドロ・バルバト)さん、そして同じく次席作品«Passage_vertical_Paysage »の作曲家Johannes S. Sistermanns(ヨハン・S・ジスターマン)さんお三方のプロフィールと「音楽における個人的関心事」「リュック・フェラーリのどこに魅かれますか?」について伺ってきましたのでお伝えしていきましょう。(みなさまからいただいた原文をそのまま掲載しています。また参考として意訳をつけておきます)。

 

なお当ブログでは梅沢英樹さんのインタビューを掲載しています。こちらも合わせてご覧ください。

 

【緊急企画!】プレスク・リヤン賞2015 受賞者・梅沢英樹さん単独インタビュー 

 

梅沢英樹さんは現在東京芸術大学大学院在学中。

昨年はプレスク・リヤン賞に輝いただけではなく、CCMC2015 でのACSM116賞やSelected Work for Ina-GRM/Banc d'Essai 2015も受賞するという快挙を成し遂げました。

 

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« Le Néant  » by Hideki Umezawa : 

 

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

聴覚が自分にとって一番直感的、感覚的に働くと感じています。音を通して新しい知覚のかたちや、

自然や社会との新しい関係性や可能性を模索してみる。それは音をコントロールすることではなくて、自分たちを取り巻く環境や世界との距離をほんの少し、近づけたりするプロセスのようなものであると考えています。

そういったことに関心を持っています。

 

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

拡散的な世界の一部を拾い上げ、問いやアレゴリーと共に提示をすること、時にそのままの情報として伝えること。感覚や経験、記憶など、そういったものの共有可能性や、断絶を自身の作品をハブとし、試みている部分に興味、というよりか影響を受けています。

 

続いて次席作品に選ばれた2人の作曲家をご紹介します。

 

 

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Johannes S. Sistermanns: special mention 

 

Your personal concerns in music

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

a i r f l o w i n g  [l u f t f l i e s s e n] 

on hearing and seeing Here I can see further than hear. From a certain distance on, movements happen sound and noiseless. One experiences the edge of sound. Looking becomes hearing and seeing.

ーエアフロウイング airflowingー

聴覚と視覚では視覚が勝るであろう。距離が離れていれば音は聴こえない。

誰しも音の断片を耳にして初めて、傍観することが聴き知ることへと変化する。

 

air carries sound Does sound move on air? Through air? Does air combine with sound?

ー空気は音を伝えるー

音は空気内を移動しているのだろうか?通り抜けているのだろうか?

それとも空気と音は融和しているのだろうか?

 

co-creator The air is the first resonance of the voice. Air is co-creator of sound which is becoming, which is heard.

ー音の共同制作者ー

空気は声の最初の反響である。

空気こそが聴者の前に出現し傾聴されるのである。

 

airplace In listening, one can concentrate on a source of sound or on the impingement of the sound on the eardrum. The distance between sound impulse and eardrum, not heard as an interval, opens the actual location of the sound event; the airplace. Airplace is transitional space, dimensionless, space of sound spreading, sound speed, the alteration in and through the air and space of all simultaneous intended and unintended sound impulses. Airplace is event place. Can never be grasped.

 

ーエアプレイス airplaceー

人が音を聞く時、音源もしくは鼓膜の振動に集中している。

音の発生から鼓膜までの距離(時間的感覚でなく)が事実上の音響現象、反響空間を位置づける。

 

エアプレイスは無次元の音の伝達場所であり音速で展開する音の拡張場所であり、

空気を介する音の変容、またすべての同時発信される意図された(または意図されていない)音の発信源のための場所である。

エアプレイスは現象である。よってそれを感知認識することは不可能である。 

 

air collector As someone who composes field recordings made by himself in a soundplastic manner in/with spaces, it becomes clear to me that everyone who works with discovered sounds is an air collector. He works with a sound between impulse and eardrum, between sound source and microphone membrane, grasps airplaces, magnetizes an airflow, creates a hearingseeing, in which air carries sound co-creatively and self-creatively. Composing is air collecting.

 

letting Not only seeing carriers in air. Not composing. Not recording. Not collecting. Just letting air be itself for once.

ー作曲、それは空気を収集することー

サウンドプラスティック Soundplasticの手法で空気を利用して野外録音をする作曲家のように、音を発見しそれに働きかける者が空気の収集家であることは明確である。

彼らは音の衝撃と鼓膜の合間で音響を形作る。

音源とスピーカーの被膜の間でエアプレイスを支配し、空気の潮流を操作し、可視聴化し、その空気が音の創造性を届ける。

作曲とは空気を収集することである。空気をただ作曲や録音やイメージの伝達に利用するだけでなく、空気そのものを音のエアプレイスへと昇華するのである。

[Excerpt ou of the published text ‚airflowing' [Luffliessen] © Johannes S. Sistermanns   2005

 

 

 

 

About Luc Ferrari, which are his characteristics that you are most interested in?

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

 

. . . the way he makes me listening, he discouvers spaces places, he establishes situations in listening into details,

how he leads my attention to the horizon, opens distances, invites me to walk alone in his spatial creation, 

how he loves sound and the way he gets inspired in human voices and his deep trust in the ephemeral, whirring.

彼がいかにしてわたしの耳を奪うか、いかにして空気を発見し、また詳細までもを聴かせる状況を作り出すか。

どんな風にわたしを地平線へいざない、異世界へ連れ出し、彼の広大な創造の場へ一人歩き出させるか。

彼がどんなに音響を愛し、人間の声から啓示を受け、刹那を信頼したか。

そのすべてに感嘆するよ。

 

S.ジスターマンさんはドイツ出身。これまでに何度か日本を訪れ、コンサートを行っておられ、また近日中に来日されるという情報もあります。楽しみですね。

 

Johannes S. Sistermannsさんのウェブサイトはこちらになります。

興味をもたれた方はぜひこのリンクからご覧ください。

http://www.sistermanns.eu/#page/home

 

そして同じく次席作品となった«To bee or not to bee »のLisandro Barbatoさん。

 

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«To bee or not to bee  » byLisandro Barbato  : special mention

 

Your personal concerns in music

ーあなたの音楽における個人的な関心事を教えてくださいー

 

Inside each sound there's a micro-cosmos, a message, a piece of puzzle waiting for to  fit with another one

in a sort of sound's macro-cosmos.

the artisan work "to sculpt" the sound until to get "there",  to the jewel, to the sound's micro-cosmos,

That's what truly is satisfying in the music universe.

 

あらゆる音響の中には宇宙があり、メッセージがある。

またそれはいわゆる最小宇宙の中で別のピースを探し求めるパズルの一片である。

その一片---最小宇宙における宝石のひとつぶ---を削り出す達人技こそ正に音楽世界を満足たらしめる行為に他ならない。

 

 

 

About Luc Ferrari, which are his characteristics that you are most interested in?

リュック・フェラーリについて最も興味のある点は?ー

 

Every sound is a unique and unrepeatable event in time. The fascinating thing  of the sounds recording is

that you can capture the soul of this unique and unrepeatable moment to observe and translate their message .

luc ferarri was a composer with the gift to "see" the message in the sound's soul.

Taking up The  idea of the "cosmic puzzles"...Ferrari was a great cosmic puzzle maker

すべての音響は唯一のものであり再現不可能である。

音響録音の素晴らしい点はこの瞬間の神髄をとらえ、音のメッセージを聴き取り観察できることだ。

リュック・フェラーリはこの音の魂に込められたメッセージを受け取る能力を授けられた作曲家である。

音響という宇宙の仕掛けのアイデアを盗み、またそれを創造した。

彼は音宇宙の仕掛け職人さ。

 

Lisandro Barbatoさんはスイス出身。

ウェブサイトは現在構築中とのことですが、オープンしましたらまたこの場で掲載したいと思います。

ちなみにサウンドクラウドはこちらだそうです。

https://soundcloud.com/lisandro-barbato

 

前回の「プレスク・リヤン賞2013」入賞者インタビューとはまた違って、みなさんの観点がそれぞれとても面白いですね。

ぜひ関連過去記事も読んでいただけますと幸いです。

 

【関連過去記事】

「プレスク・リヤン賞2013」入賞者の紹介です! - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

フランスでのプレスク・リヤン賞2015(prix Presque Rien 2015)コンサートと賞状授与式 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

【緊急企画!】プレスク・リヤン賞2015 受賞者・梅沢英樹さん単独インタビュー - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

「プレスク・リヤン賞2013(Prix Presque Rien2013)講評」 (全文) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

リュック・フェラーリと世界の電子音楽~プレスク・リヤン賞をめぐって~(プレスク・リヤン賞2013コンサート)作品と作曲家の紹介(序盤) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

リュック・フェラーリと世界の電子音楽~プレスク・リヤン賞をめぐって~(プレスク・リヤン賞2013コンサート)作品と作曲家の紹介(中盤) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

リュック・フェラーリと世界の電子音楽~プレスク・リヤン賞をめぐって~(プレスク・リヤン賞2013コンサート)作品と作曲家の紹介(終盤) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)