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リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

こちらリュック・フェラーリ相談室(第拾弐回)

全国2万5千人超のリュック・フェラーリファンのみなさま、こんばんは。

今日は半年ぶりとなりましたが、パリのプレスク・リヤン協会本部との共同企画『こちらリュック・フェラーリ相談室』第12弾をお届けしたいと思います。

 

(現在【注目!】プレスク・リヤン賞2015とプレゼントのお知らせ(12月19日追記あり) にてブリュンヒルドフェラーリのレコードと本年10月に行われたコンサートのCD-Rが当たるクイズ企画を実施中です。締め切りは12月25日!どんどんご応募ください!詳しくは上記リンクからご覧ください)

 

 

 

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このコーナーは、常日頃リュック・フェラーリを愛聴していただいている方のみならず、リュック・フェラーリについて「名前くらいしか知らなかった」という方にも彼や彼の曲の持つ様々な魅力についてご紹介していくというコーナーです。

 

『雪景色の中で聴くリュック・フェラーリ

『実家の大きなお風呂で聴くリュック・フェラーリ

『お布団の中で寝る前に聴くリュック・フェラーリ

 

といった、「ちょっとした思いつきの質問」から真面目なリュック・フェラーリの楽曲のおススメまでを、パリのプレスク・リヤン協会のメンバーにぶつけ、しっかりした回答をいただいてしまおうという、頭の肩こり、耳の疲れをほぐしていきたいという独創的なコーナーですが、とうとう今日はパリの本部には尋ねにくい質問がきてしまいました。

 

なお、音楽の好みにはもちろんそれぞれ個人差がございます。このページで紹介されている曲が、少しでもみなさまがリュック・フェラーリ作品に触れていただくきっかけになればと思います。

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今日のご質問はこちらです。

 

「いつもフェラーリについて興味深いお話をありがとうございます。リュック・フェラーリについてググっていると『逸話的音楽』という言葉がよく出てくるのですが、これは簡単に言えばどういう意味なのでしょうか?僕はフランス語がわからないのですが、やっぱり必要ですか?また、そんな『逸話的音楽』の中でおすすめのものがあったら教えてください」

 

ご質問ありがとうございます!素晴らしい質問だと思いますがただ、この回答は翻訳などがきっと手に負えなくなると思うので、今回は回答を控えさせ……という訳にもいきません。そこで、ごくごく簡単にということで、今回、支局運営の方に回答をお願いしてまとめていただきました。(なお今回の「逸話的音楽」という言葉の説明および定義は回答者によるものです)

お待たせしました、それではどうぞ!

 

 

「いい質問ありがとうございます。

さてここで少し本筋とはズレちゃうのですが(逸話らしく)、まず「逸話/Anecdote/Anecdote」というのを辞書で引いてみますと日本語では

「ある人についての、世人にあまり知られていない、興味ある話。エピソード」【広辞苑

なんて意味が書いてあります。

しかし本来フランス語ではこの意味(エピソード)としては用いられません。

リュック・フェラーリはこの” Anecdote "という言葉を一種の皮肉~抽象化していく電子音楽への~として使い『異型接合体』を作りました。(さてこのことがどういう事件に発展していったかは、「リュック・フェラーリとほとんど何もない」という本に書かれています)

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「取るに足らないこと(音)逸話」を積み重ねることによって音は、それを聴いている人それぞれの想像力に強く働きかけます。

例えばあなたが成田空港で友達とお茶を飲んでいる時にその周囲にいるすべての人の言葉がわかっている訳ではありませんよね。私たちは普通それを「成田空港の雑音」として認識します。しかしそれが録音されたものを聴く時には単純に「空港の音」として聴いたり、「友人との成田での会話」として聴いたり、また、ちょっと変かもですが「成田空港のカフェで横にいたかっこいい外国人の男の子が話していた言葉」を聴いたりします。

ひとつだけ言えることは、その録音は、『録音したあなたをその時構成した録音私的なもの他人にとってはあまり取るに足らないもの」であるということです。もちろん「リュック・フェラーリが録音したもの」が取るに足らない、なんてことはないのですが、そういうところも含めて彼は皮肉っぽくこの言葉を使ったようです。

同じようにあなたがリュック・フェラーリの逸話的音楽を聴いた時、あなたはリュック・フェラーリによって録音された逸話~音として~の中に入って、それに沿いながら想像力を働かせることになります。つまりそこではその話されている「言語」の意味を理解できる、できないというのは大きな問題とはならないことになります。

 

さて、ここで大きく本筋に戻って「逸話的音楽」を考えましょう。これは、ざっくり言うと「(電子音楽の)曲の中に、街の中の生活環境音や人々の色々な話し声などが含まれている音楽」のことです。

生活環境音というのはさっきの例えで言えば、飛行機の離陸音やアナウンスのチャイム、カフェで紅茶がコポコポ淹れられていたり、シンクにお水がちょろちょろと流れている音やロビーの足音などなど…ですね。これらを録音し、それを素材にして作られた作品です。でも、「お水の流れる音」を使った音楽ならヒーリング・ミュージックなどでもありますし、足音を楽器のように抽象的に扱う音楽もありますよね。そうではなく、リュック・フェラーリはこういった身の回りにある音と音を計算しながら組み合わせて物語のようなものを編んでいき、あたかも聴いている人がマイクを持っていろいろなところへ旅をしているかのような気持ちになってしまう、そんな音楽を作ったんです。

聴いていると、あっどこかで子どもが泣いているな、とか、車通りの多いとこへきたな、とか、ここの店のおっちゃん愉快な人だな、などと色んな出会いがあります。けれどもそれは決してドキュメンタリーや現場中継のようなものではなく、また登場人物が台詞を言って、シッカリ起承転結のある「おはなし」を伝えるわけでもない。あくまで音楽との戯れの中で、聴いているあなたのイメージの中で立ち現れていく、夢芝居のような世界を彼は作ったのです。

 

たとえばこれを紹介しましょう、「逸話的なものたち-Les Anecdotiques-」。

この作品についてフェラーリは「旅をして、面白いと思った音を録音し、その“現実”を使いながら“逸話”をつくった」というようなことを言っています(実際には、もっと難しいことを言っていますが)。つまり、現実の旅なんだけど架空の旅、という、アンビバレントな世界ですね。

工事現場のトンカチの音が巨大化して近づいてきたり、言葉がラップのように繰り返されたり、音響的にもとても茶目っ気が効いています。

いろんな土地の言葉が出てくるのも聴いていて愉快なところです。スペイン、イタリア、アメリカ…。いくつの言葉が出てくるか、探しながら聴くのも面白いですね。フランス語がわからなくて心配とのことですが、英語も出てきますからご安心下さい。

聴き方次第では外国語がわかるかどうか関係なく充分楽しめるので、あまり気にしなくても大丈夫……なんですが、そういうことなら併せてこちらもご紹介しておきましょう。

不整脈=非リズム的なもの-Les Arythmiques-」。単体のアルバムもありますが、10枚組CD「電子音楽作品集」の10枚目にも収録されています。リンク先の試聴コーナーでは十数秒しか聴けませんが、最後の曲には、なんとあなたのとてもよく知っている言葉が連発されるのです…おおっと、ネタバレしそうになったところでお開きといたしましょう!どちらもとてもオススメですよ♪」

(A)

 

いかがでしたか?一度読むと「ふむふむ」と思いましたが、重ねて読んでみると「なるほど!」とちょっと思ってきました。繰り返し読み、聴いているうちにちょっぴり自分の物語が見つかるような気持ちにもなってきました。ありがとうございました。

私も年末は普段の息苦しい生活にしばられた想像力を開放して、音の世界で思いっきり羽を広げてみたいと思います!

 

本日紹介していただいた作品の収録CDはこちらになります。

 

「逸話的なものたち-Les Anecdotiques-」

http://www.amazon.co.jp/Les-Anecdotiques-Luc-Ferrari/dp/B000286RLQ

 

不整脈=非リズム的なもの-Les Arythmiques-」

http://www.amazon.com/gp/product/B002C1F5T6/ref=dm_ws_sp_ps_dp

 

 

 

 

当コーナーではみなさまからのお気軽お手軽なご質問(日本語可)を募集しています。

 

また、当相談室ではリュック・フェラーリ作品を扱っていただいているお店のサイトも紹介したいと思っております。リュック・フェラーリ作品を扱っていただいているお店の方もぜひお気軽にメールでお知らせください。

 

 

それでは次回をお楽しみに!

 

【参考過去記事】

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第拾壱回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

こちらリュック・フェラーリ相談室(第10回)緊急特別大雪企画! - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

こちらリュック・フェラーリ相談室(第9回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第八回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第七回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版) 

 

こちらリュック・フェラーリ相談室(第六回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第五回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第四回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(第3回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

『こちらリュック・フェラーリ相談室』(仮称)(第二回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

こちらリュック・フェラーリ相談室(第1回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

 

 あなたの街のリュック・フェラーリ(K2レコード・大阪) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)