リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」【第四回】

 

ヴォルテール通り11番地、地下2階……。

 

トルミン伍長:(扇子で顔を扇ぎつつ)あっぢ~~~~。いや~、ほんとにね~。暑くてたまりませんね最近……ふ~。いや、ほんとに、ほんと……。

こんな暑い中、『クーラーなしのひと工夫』とかで過ごせるとでも思ってるんですかね?

でもですよ、こ・ん・な・時にはですよ(ガチャリと冷蔵庫のビールを取り出す)これこれ。これなんですね~。うっふふ。プシュッとね~♪

(グビッ、グビッ……)プッハ~~~~!ヒ~!

♪ビールは、トルミンのためにあるん~……

 

 

ルスタロ少佐:トルミン伍長!

ト:!?

少:おやおや~、そこでなにをしているのかね?ん~?

ト:ハッ、れっ、冷蔵庫内の点検をしておりましたっ!

少:なるほど~、君はどうやら点検を目ではなくて、ノドで点検できる能力があるんだね。私に黙ってこの神聖なる勤務中に鼻唄混じりにビールを飲むなんざあなかなかいい度胸じゃないか、え!?この暑さの中で私がイラついていないとでも思っているのかね?ええ?

 

ト:恐れながら少佐!これだけ暑いと勤務に支障をきたすであります!だいたい、そもそもがお盆のお仕事は休みになるのが世の相場であります!

少:お、お盆……

ト:つまり、じ、自分も夏休みが欲しいであります!以上報告終わり!

少:あのな…シャキシャキ答えれば私が納得するとでも思ってるのかね?一応尋ねるが、そもそも一体、君は休みを取って何がしたいんだ?具体的に述べてみようか?ん?

 

ト:え~~そんなのいっぱいありますよ。まぁ、まず夏といえば「高校野球」ですよね。

一夏にかける球児たちの汗と涙をスタンドで支えるブラスバンドの応援歌なんて聴いてると、観てるこちらも興奮して汗がふきでてきちゃいますよね。

 

特に今年は目のつけどころのいい高校なんかはリュック・フェラーリと10年前に『水から救われたアーカイブ』Les archives sauvées des eaux/Luc Ferrari avec Otomo Yoshihide [CPCD-001] - Yen2,500 : ::: Disc Callithump :::, callithump online shopで共演した大友良英さんが音楽を担当してる、あの『あまちゃん』のオープニングテーマを演奏したりしているじゃないですか!

あ、そういや、さっき諜報室に流れてきたテレックスで、あの『あまちゃん』のオープニングテーマをフェラーリ夫人のブリュンヒルドさんがとってもお気に入りで、スタジオのポストビリッヒやお家に来たお友達に聴かせまくってるそうなんですよ!

日本支局でも『あのサントラCD、送った方がいいんじゃないか?』って言ってるそうで。なんでもフランスではちょっと手に入れにくいみたいなんですよね……まあ、この暑い中、そういうブラスバンドの熱演をクーラー効いたお茶の間で……。

 

少:トルミン……?「お盆」とか「夏休み」とか「高校野球」とか、君はさっきから基本的な設定をなし崩しにするような……、この場所がどこにあるのか、どうやらもうすっかり忘れて……

ト:(無視)あっ!後ね〜、国際音楽祭とかも憧れるんですよね~ザルツブルグ音楽祭とか、BBCプロムスとかあるじゃないですか。生のオーケストラに触れてみたい!

 

少:なかなか高尚だな。次は『花火大会』とかもっとベタなことでも言うのかと思えば……。

ト:あーそれそれ!花火大会!忘れちゃってましたよーいいっスね、夏祭りなんかもいいッスよねー。人々が行き交う喧騒とあの平和な火薬のにおい…たまんないっス。

 

少:ま、私にはわざわざ人混みに飛び込む奴の気が知れないがね……。

ト:まぁ敢えて混雑を避けて、なんでもない田舎町をぶらぶら散歩するのもいいですよね。知らない街を散策するんですよ。思わぬ恋のチャンスがあったりして…ぐふふ。

 

少:……よろしいわかった。君の望みを叶えてあげよう。

ト:えっ?ホントに私に休暇をいただけるんですか!?ヤッター!言ってみるもんだね~。

少:ん?私がいつ休暇をあげると言った?君のお望みのものはすべてこの中に入ってるんだ。ほら。

ト:え…?この中にボーナスが入ってるんですか?

少:ボーナスよりもっといいものだ。あ、いいところに社長も……それでは社長、紹介をよろしくお願いいたします。

 

たかた社長:ハイ、そこでみなさん今日はこれ!あの!フランスの!パリの!作曲家!リュック・フェラ~リ!が全身全霊の録音で、練りに練って創り上げた「Music Promenade」!、この「ミュージック・プロムナード」を今日はご紹介いたします!

このリュック・フェラーリ作曲の「ミュージック・プロムナード」今回限りな・ん・と、特別にCD4枚で構成された本当の本物なんです!

いいですか~よ~くご覧ください~。

今日お届けするリュック・フェラーリが作曲したこの「ミュージック・プロムナード」はですよ、なんと!ほら!それぞれ、ループ!再生!する中で、4つの音源から流れる音が、だんだんとこうフワ~ッと、それぞれ気持ちよ~くそれぞれズレていく、という超レアな『インスタレーションバージョン』になっております!これほんとにとっても展示されるのが珍しい作品なんですよ!

この「ミュージック・プロムナード」ですね、この本物、皆さん去年の10月に、神戸の「ジーベックホール」で一日だけ特別に展示されたの、覚えていらっしゃいますか~?

 

11月17日神戸ジーベック:インスタレーション展示「Music Promenade(1964~1969)」 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

Music Promenade - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

たかた社長:とりあえず、こんなところで……。

 

少佐:ありがとうございました……。

ト:さすがですね……タイトルが「ミュージック・プロムナード」ってのはもう忘れませんね……。

少佐:さあ、じゃあ我々も気合いを入れなおして、恒例の聴取タイムだ!

 

ト:は!たしかに軍隊ラッパが聞こえます!これ吹奏楽ですね。かけ声も聞こえるし、アツいっすね…あっオーケストラだ。声も入ってて生々しいな~ってうわドーンと大きな破裂音だ!た~まや~か~ぎや~!

……あぁ、人々がどんどん通りすぎていく……。

風景も、時間も、そして想い出も、近づきながら過ぎ去っていく…。なんか別の場所に入り込んでしまっちゃったみたいですよ……。ああ、そうかぁ……、これなんだなぁ……。

 

少:そうだろう。「音楽散歩」の名にふさわしく、風景と記憶の断片が交錯して、ちょっとした『小旅行』になっている、と言うこともできるのではないかな?君の言っている『野球の応援』や『花火大会』などは想像を拡大解釈しすぎかもしれないけどね、ははは。

ト:いや~、これもヤバいですね~。休みの間ずっとこれ聞いてようかな。あっでもうち再生機4台もないや…。

少:心配するな。インスタレーションバージョンとは異なるが、ステレオ再生用にもちゃんと発売されているから。

あ、そうそう、そう言えば君の大好きな『夏休み』の許可部署なんだが、先々週から全員バカンスで来月まできっちり閉まっているから安心しろ!そもそも君はこのヴォルテール通りが一体どこにあると思っているんだ!ええ?

 

ト:イエッサー!最後の方のセリフはもう聞かなかったことにするであります!それとそっちがバカンスなら、こっちはこのCDと「薮入り」するであります!敬礼!

少:あ、こら待て!またんか~~~!

 

今日聴いたCD...

 

L.Ferrari: Und So Weiter, Music Promenade

 

でした♪

http://tower.jp/item/3201976/L-Ferrari%EF%BC%9A-Und-So-Weiter,-Music-Promenade

 

 

 

10枚組のLuc Ferrari – L'Œuvre Électroniqueでも聴くことができます

 

http://www.discogs.com/Luc-Ferrari-L%C5%92uvre-%C3%89lectronique/release/1793296

 

【関連過去記事】

 

「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」【第3回】 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」【第2回】 - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

 

リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦(第一回) - リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)