全国2万5千人のリュック・フェラーリファンの皆様、こんにちは。
今回から新しく「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」が始まります。この企画ではリュック・フェラーリの曲を読み物仕立てで紹介していきます。
【第一回】
ヴォルテール通り11番地、地下2階……。
トルミン:お呼びでしょうか、ルスタロ少佐。
少佐:おお、トルミン伍長か。よく来てくれた。まあかけたまえ。
今日はほかでもない、君が課内でアートに詳しいというので、折り入って頼みがあってな。率直に言おう。極秘任務だ。フェラーリという人物を知っているかね?
ト:へ?フェラーリ?あのイタリアの自動車メーカーの人ですか?
少:ハァ~(ため息)。君はリスニングと狙撃の腕は上等だが、なにぶん話の流れが読めんで困る。リュック・フェラーリだよ、LUC FERRARI。
トルミン:ああ、ああ、名前だけは知ってますよ、確かフランスの現代音楽の作曲家……でしたっけ?
少佐:うーん、半可……いや、まあ及第点というところだな、彼はもちろん偉大な作曲家だが、映画や絵画も……まあ今日はいい、それはおいおい話そう。
いいかトルミン、リュック・フェラーリというのは魔術師だ。それも音の魔術師。彼の音楽は聴くものを迷宮(ラビリンス)に誘い込むと言われている。要するに、聴くとたちどころにワクワクしてしまうんだ。こういうのをあれこれと敵さんに利用されたら、非常にマズいことになる。まあこれを見てくれ。これがリュック・フェラーリの若い頃の写真だ。
トルミン:うわ~鋭い眼光…いかにも『デキる男』って感じですね。しかもおしゃれ!かなりのイケメンじゃないですか。でも白黒だとちょっとよくわからないですねぇ…最近の写真はないんですか?
少:ああ、最近のはこれだ。自宅のピアノの前にいるな。
ト:あらかわいいピアノ☆じゃなくて...この手つき、それにこの目つき……若い頃と鋭さは変わってませんね。いや、このような人物だったとは知りませんでした。
少:まあ、もう少し君が詳しく知りたいようならウィキを見てくれ。
ト:え……ウ、ウィキですか?
少:あ!それを言うんじゃないっ!
少:それにな、ホームページだってあるんだ……ん?何か言いたいようだね?
ト:いや、何も言いません。絶対に言いません。
少:そうか……じゃあリンクを貼っておこう。
少:……で、どうだ、リュックの経歴は頭に叩き込んだかね?
ト:はい、とりあえずは……。で、まずこのヤバい音造りのフェラーリさんを聴取する、ってのが私の任務なわけですね?
少:その通りだ。彼は膨大な数の曲を残している。ディスクになったものもたくさんある。それをしらみつぶしに聴いて報告するんだ!ホレ!(ドン!)
ト:わっ…と……えー、こんなにあるんですかー?
少:ここにほとんど何からなにまである。電子音楽が有名なんだがな、それだけじゃない。ピアノ曲からオーケストラ曲、即興、劇、映画、ルポルタージュ、ラジオドラマ、それにDJもやるんだ。
ト:ひー、なんでもありじゃないですか!
少:リュックの武器はマイクだ。そのへんの音を録ってきてるようにみえて、どこにもないような音を作ってしまうんだ!さあ!フェラーリ作品を傍受するんだ!ん……?何だ?
ト:あ、いえ……。それじゃ、早速聴いちゃいますからね...フンフン♪......アレ?...マイクどころか、こりゃあ結構正統派のピアノ曲じゃないですか。
少:おっ、それは最初期の曲だな。Suite pour piano(組曲、ピアノのための)という曲だ。Christine Lagniel, Michel Maurerの演奏する『ピアノピアノ』に収録されているな。
1952年の作品ということは、彼が作曲をはじめたのは1946年だから、青少年期に受けた音楽的影響が素直につめ込まれているわけだ。
ト:ほー、プロコフィエフみたいですね。いや、バルトークっぽくもある。
少:おお、鋭い。相変わらず耳はいいようだな。フェラーリは17歳の時、ヴェルサイユのコンセルヴァトアールで隠れてバルトークのピアノソナタを弾いていたらしいぞ。しかしこのSuite pour pianoはセリー技法を意識したと自認しているな。
ト:これすごくいいですね!おお、このCDが欲しくなってきました!ジャケットもすごくおしゃれですしね!いいわーこれ、すごくいいなー……。
少:絶版でなんだか高値になってるみたいだが、まだお安く手に入ることもあるぞ。
ト:……絶対に『よし、じゃあ君にこのCDをあげよう!』とは言ってくれないんですね……。でも、なんだかフェラーリ青年の初々しい作曲家としての出発点が見えてきましたよ!
少:そうか、よし、調査ご苦労。下がってよろしい!今後も報告を命じる!
ト:イエッサー!
今日トルミン伍長が聴いたCDは...
Luc Ferrari / Christine Lagniel, Michel Maurer (レーベル:Montaigne) より
トラック1~トラック4 Suite pour piano
でした♪現在廃盤ですが、ごくたまに市場に出回りますのでチェックしてみてください。
次回をお楽しみに!