リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦(第一回)

 

全国2万5千人のリュック・フェラーリファンの皆様、こんにちは。

今回から新しく「リュック・フェラーリ銀盤解説大作戦」が始まります。この企画ではリュック・フェラーリの曲を読み物仕立てで紹介していきます。

 

 

【第一回】

ヴォルテール通り11番地、地下2階……。

 

 

トルミン:お呼びでしょうか、ルスタロ少佐。

 

少佐:おお、トルミン伍長か。よく来てくれた。まあかけたまえ。

今日はほかでもない、君が課内でアートに詳しいというので、折り入って頼みがあってな。率直に言おう。極秘任務だ。フェラーリという人物を知っているかね?

 

ト:へ?フェラーリ?あのイタリアの自動車メーカーの人ですか?

 

少:ハァ~(ため息)。君はリスニングと狙撃の腕は上等だが、なにぶん話の流れが読めんで困る。リュック・フェラーリだよ、LUC FERRARI

 

トルミン:ああ、ああ、名前だけは知ってますよ、確かフランスの現代音楽の作曲家……でしたっけ?

 

少佐:うーん、半可……いや、まあ及第点というところだな、彼はもちろん偉大な作曲家だが、映画や絵画も……まあ今日はいい、それはおいおい話そう。

いいかトルミン、リュック・フェラーリというのは魔術師だ。それも音の魔術師。彼の音楽は聴くものを迷宮(ラビリンス)に誘い込むと言われている。要するに、聴くとたちどころにワクワクしてしまうんだ。こういうのをあれこれと敵さんに利用されたら、非常にマズいことになる。まあこれを見てくれ。これがリュック・フェラーリの若い頃の写真だ。

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トルミン:うわ~鋭い眼光…いかにも『デキる男』って感じですね。しかもおしゃれ!かなりのイケメンじゃないですか。でも白黒だとちょっとよくわからないですねぇ…最近の写真はないんですか?

少:ああ、最近のはこれだ。自宅のピアノの前にいるな。

 

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ト:あらかわいいピアノ☆じゃなくて...この手つき、それにこの目つき……若い頃と鋭さは変わってませんね。いや、このような人物だったとは知りませんでした。

 

少:まあ、もう少し君が詳しく知りたいようならウィキを見てくれ。

ト:え……ウ、ウィキですか?

少:あ!それを言うんじゃないっ!

リュック・フェラーリ - Wikipedia

少:それにな、ホームページだってあるんだ……ん?何か言いたいようだね?

ト:いや、何も言いません。絶対に言いません。

少:そうか……じゃあリンクを貼っておこう。

LUC FERRARI

少:……で、どうだ、リュックの経歴は頭に叩き込んだかね?

ト:はい、とりあえずは……。で、まずこのヤバい音造りのフェラーリさんを聴取する、ってのが私の任務なわけですね?

 

少:その通りだ。彼は膨大な数の曲を残している。ディスクになったものもたくさんある。それをしらみつぶしに聴いて報告するんだ!ホレ!(ドン!)

 

ト:わっ…と……えー、こんなにあるんですかー?

 

少:ここにほとんど何からなにまである。電子音楽が有名なんだがな、それだけじゃない。ピアノ曲からオーケストラ曲、即興、劇、映画、ルポルタージュ、ラジオドラマ、それにDJもやるんだ。

 

ト:ひー、なんでもありじゃないですか!

 

少:リュックの武器はマイクだ。そのへんの音を録ってきてるようにみえて、どこにもないような音を作ってしまうんだ!さあ!フェラーリ作品を傍受するんだ!ん……?何だ?

 

ト:あ、いえ……。それじゃ、早速聴いちゃいますからね...フンフン♪......アレ?...マイクどころか、こりゃあ結構正統派のピアノ曲じゃないですか。

 

少:おっ、それは最初期の曲だな。Suite pour piano組曲、ピアノのための)という曲だ。Christine Lagniel, Michel Maurerの演奏する『ピアノピアノ』に収録されているな。

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1952年の作品ということは、彼が作曲をはじめたのは1946年だから、青少年期に受けた音楽的影響が素直につめ込まれているわけだ。

 

ト:ほー、プロコフィエフみたいですね。いや、バルトークっぽくもある。

少:おお、鋭い。相変わらず耳はいいようだな。フェラーリは17歳の時、ヴェルサイユのコンセルヴァトアールで隠れてバルトークピアノソナタを弾いていたらしいぞ。しかしこのSuite pour pianoはセリー技法を意識したと自認しているな。

 

ト:これすごくいいですね!おお、このCDが欲しくなってきました!ジャケットもすごくおしゃれですしね!いいわーこれ、すごくいいなー……。

少:絶版でなんだか高値になってるみたいだが、まだお安く手に入ることもあるぞ。

ト:……絶対に『よし、じゃあ君にこのCDをあげよう!』とは言ってくれないんですね……。でも、なんだかフェラーリ青年の初々しい作曲家としての出発点が見えてきましたよ!

 

少:そうか、よし、調査ご苦労。下がってよろしい!今後も報告を命じる!

 

ト:イエッサー!

 

 

 

今日トルミン伍長が聴いたCD...

 

Luc Ferrari / Christine Lagniel, Michel Maurer (レーベル:Montaigne) より 

トラック1~トラック4 Suite pour piano

 

でした♪現在廃盤ですが、ごくたまに市場に出回りますのでチェックしてみてください。

 

 

次回をお楽しみに!