リュック・フェラーリの『プレスク・リヤン協会』(簡易日本語版)

フランス現代音楽における重要な作曲家の一人である、リュック・フェラーリ(Luc Ferrari:1929~2005)に関する情報を主に日本語でお伝えします。プレスク・リヤン協会(Association Presque Rien)は彼の友人達によってパリで設立されました。現在もその精力的な活動の下で続々と彼の新しい作品や楽曲、映画、インスタレーションなどが上演されています。 なお、より詳しい情報は、associationpresquerien@gmail.comまでお問い合わせください

ラジオ・ドラマからヘールシュピールへ6

ちょっと間が空いてしまった。そして、前回言及した《ファーウェストニュース》は上演されないことになったので、今回は《逸話的なもの Les Anecdotiques》について、話そう。
これは、以前にリュック・フェラーリがピエール・シェフェールと訣別するきっかけになった、《異型接合体》を彼自身が「逸話的音楽」と呼んだ(多少のアイロニーがなくもないが)ということから、フェラーリのいわば「専売特許」なジャンルの、だから、集大成という感じのものになっている。これは、彼が2001年6月から2002年7月までの間に旅行した土地での録音をもとにして作られている。そして、またこれは「概念の開拓」シリーズの第6弾として、過去の彼のアーカイブの総決算(だから「逸話的」という名前なのだ)でもあり、三つの「層」から成っている。一つは、今言った各地での録音。もう一つは、抽象的な電子音響。そして最後は、これもフェラーリの独壇場の感のある、若い女性の会話である。全体は15のシーケンスからできていて、それぞれに土地の名前(まるでプルーストだ)が割り当てられているが、その間に電子音響が流れ、女性たちの話し声もオーヴァーラップして聞こえる。リュック・フェラーリによれば「謎ときに終始しないためにも、また知りたいと思う人のためにも、シーケンスのタイトルを教えよう」ということで、もちろん、17日の会場で配るプログラムにも載せて、それを見ながら聴くことができるようにしたいが、ここで以下にそれを挙げておく。
(1)ヌメロ・クアトロ。ロンダ、スペイン。2001年6月。美術館のスペイン人団体客。
(2)トロス(牡牛)広場。ロンダ。改修中の闘牛場。
(3)試着。サン・ジャン・ダンジェリュス、フランス。2001年7月。練習の間、俳優たちは衣裳を試着する。
(4)トスカナの空、イタリア。2001年8月。
(5)スーペルストラーダ(高速道路)二号線。トスカナ。
(6)夕陽を浴びる糸杉。トスカナ。
(7)エーズの海。フランス。2001年9月。
(8)葡萄摘み。サン=ローラン・デーズ、フランス。
(9)牧場。テキサス、アメリカ。2001年10月。
(10)シカゴ、アメリカ。2001年10月。コンサートのための練習。
(11)ハーレーダヴィッドソン。テキサス。日曜日、村の散歩。
(12)赤い靴。エスタック、フランス。2002年7月。ラファルジュ・セメント工場訪問。
(13)海の穴、エスタック。2002年7月。
(14)ラ・ジョリエット。マルセイユの港。フランス。コンテナ船への乗船。
(15)ローヴの門。エスタック、同じ時期。ローヴというのは、海底トンネルで、エスタックの東にあるカランク(岩礁に囲まれた入江)に通じている。
(続く)(椎名亮輔)