私にとっては、だからまずフェラーリの「逸話的音楽」があって、そこから彼のさまざまなラジオへの取り組みを知るようになった。そして《ほとんど何もない第一 Presque rien no.1》については、当時はレコードも手に入らず、CDなどは存在せず、近藤譲氏もどのような経緯でこの作品を知るようになったのか、もしかしたら彼はFMで世界の現代音楽を紹介する番組を持っていて、毎回たくさんの録音を世界中から受け取っていたはずだから、そんな中に混じっていたのかもしれない(今度彼に会ったら確かめてみよう)。ともあれ、私は1984年に最初にフランスに留学するのだが、そこでまず最初に探したのが、この作品の音源だった。当時(今でもほとんど)、レコードやCDを探すのは、FNACであり、ジョゼフ・ジベールであった。(少し後から留学して来た大里俊晴さんは、パリのあらゆる中古レコード屋を漁り回っていたが。特に彼のお気に入りは、カルチェ・ラタンのクロコダイルという店と、クリニャンクールの蚤の市だった。)そこで、やっと見つけたのはと言えば、《ほとんど何もない》の第一ではなくて、第二の方であった。その頃に、おそらく初めて、INA-GRM のシリーズでレコード化されたのだと思う。ジャケットは、ルージュをひいた女性の唇だけ、という大胆なものだった。(続く)(椎名亮輔)